①「なんとかせい! 島岡御大の置き手紙」丸山清光著/文藝春秋企画出版部刊(1800円+税)
「明大の島岡御大」と聞いてピンとくる人は、野球通である。そう、六大学野球の明大野球部を、昭和27年~同63年まで率いて、平成元年に77歳で死去した島岡吉郎氏である。
著者の丸山清光氏(67)は、島岡氏と同じ長野県生まれで、明大に入り、野球部に所属して島岡監督の下で六大学リーグに優勝3回、主将・エースとして活躍した1975年(昭和50年)には、江川卓擁する法政を破って春秋連覇した強者だ。
本書は数々の島岡氏の「島岡語録」を、同氏の「10の置き手紙」としてまとめたもの。野球部の4年間を多摩・府中市にある明大野球部の合宿所「島岡寮」で過ごし、同氏の
「秘蔵っ子」として、口癖である「なんとかせい!」という「叱咤激励の言葉」を何度もかけられた人だけに、そばにいた人間にしかわからない島岡氏にまつわるエピソードや「銘言」が満載。
丸山氏は、明大卒業後は朝日新聞社で働き、その後関連会社社長を歴任。「島岡御大の語録は、IT全盛の今でも生きている。野球の世界ばかりではなく、現代社会にも活用できる」と最後の「返信」でそのエキスを披歴する。読後に「うーん」と唸ってしまう楽しい一冊だ。
②「空想クラブ」逸木裕/株式会社KADOKAWA/1600円+税
足立区在住「第36回横溝正史ミステリ大賞」受賞作家である逸木は、物語に登場する老若男女の心の機微を行間に立ち上がらせるオーソリティである。
同書の主人公は中学生。「ぼく」は、「行きたい」と思う場所や「見たい」と思うものを空想することで、実際にそれらを見ることができる力を祖父から伝授される。ぼくは、真夜・涼子・隼人・圭一郎と「空想クラブ」を発足。
ある日、真夜が川で水浴死したことを知ったぼくは、葬儀場で涼子から「去年、もうなくなってたのに。嘘なんだよ」という不可解な言葉を聞く。「真夜に会いたい」と願うぼくは、河原で幽霊となった真夜を発見し、彼女が子どもを救うために亡くなったことを知る。「子どもの安否が判らなければ、河原を出ることができない」と訴える真夜を開放するため、ぼくは仲間と共に死の真相を突き止め、涼子の謎の言葉の意味も知ることになるが……。
5人が手を繋ぎ「空想する」シーンでは、大迫力の展開を体感できる。特にラスト16ページの「奇跡」は、圧巻の筆致で読者に迫る。淡い恋心、友情etc.この年代ならではの折り重なる心模様の描写が、熱く胸を打つ。中学生たちが、それぞれの事情を抱えながら、亡くなった友人のために奔走する逸木渾身の青春ミステリだ。若者たちの心情を表す逸木の比喩の美しさ、緻密な構成が絶品で、著者が込めた深い想いに触れる喜びを味わうことができる。

著者の丸山清光氏(67)は、島岡氏と同じ長野県生まれで、明大に入り、野球部に所属して島岡監督の下で六大学リーグに優勝3回、主将・エースとして活躍した1975年(昭和50年)には、江川卓擁する法政を破って春秋連覇した強者だ。
本書は数々の島岡氏の「島岡語録」を、同氏の「10の置き手紙」としてまとめたもの。野球部の4年間を多摩・府中市にある明大野球部の合宿所「島岡寮」で過ごし、同氏の

丸山氏は、明大卒業後は朝日新聞社で働き、その後関連会社社長を歴任。「島岡御大の語録は、IT全盛の今でも生きている。野球の世界ばかりではなく、現代社会にも活用できる」と最後の「返信」でそのエキスを披歴する。読後に「うーん」と唸ってしまう楽しい一冊だ。
②「空想クラブ」逸木裕/株式会社KADOKAWA/1600円+税
足立区在住「第36回横溝正史ミステリ大賞」受賞作家である逸木は、物語に登場する老若男女の心の機微を行間に立ち上がらせるオーソリティである。

ある日、真夜が川で水浴死したことを知ったぼくは、葬儀場で涼子から「去年、もうなくなってたのに。嘘なんだよ」という不可解な言葉を聞く。「真夜に会いたい」と願うぼくは、河原で幽霊となった真夜を発見し、彼女が子どもを救うために亡くなったことを知る。「子どもの安否が判らなければ、河原を出ることができない」と訴える真夜を開放するため、ぼくは仲間と共に死の真相を突き止め、涼子の謎の言葉の意味も知ることになるが……。
5人が手を繋ぎ「空想する」シーンでは、大迫力の展開を体感できる。特にラスト16ページの「奇跡」は、圧巻の筆致で読者に迫る。淡い恋心、友情etc.この年代ならではの折り重なる心模様の描写が、熱く胸を打つ。中学生たちが、それぞれの事情を抱えながら、亡くなった友人のために奔走する逸木渾身の青春ミステリだ。若者たちの心情を表す逸木の比喩の美しさ、緻密な構成が絶品で、著者が込めた深い想いに触れる喜びを味わうことができる。