足立朝日

羅針盤 VOL.109

掲載:2020年10月5日号
 2面の「この本」欄に書いた「なんとかせい!」は、正に「読み終わった後に『うーん』と唸ってしまう楽しい一冊だ」。
 「明大の島岡吉郎」が、エピソード満載の伝説の人ということもさることながら、執筆者の丸山氏が、同郷の監督の下で4年間苦楽をともにした人とくれば、これはもうたまらない。
 「野球の前にまず、人間の修養を積め」「旧来の陋習を破れ」などの「島岡語録」には、野球ファン、六大学野球ファンならずとも、「人生こう生きるべし」というメッセージが凝縮している。
 そして、ラスト章の「返信」は、丸山氏が朝日新聞社販売局にいた履歴を踏まえての「新聞応援歌」だ。インターネットの普及に伴い部数減が続く新聞業界を見て、島岡御大の口癖にひっかけて「新聞もなんとかせーい」と叫ぶ筆者の声には、大きな説得力がある。
 「情熱や誠実に勝るものなし」「日々鍛錬」などの言葉は、決して「空文句」などではなく、島岡氏と丸山氏の響き合う実践の中で生まれた言葉だと思う。コロナ禍の中で、「一幅の清涼剤」のような本に出合った。  (編集長)