足立朝日

和文化継承委員会まほろば 代表 榎本 龍晃 さん 足立区出身

掲載:2021年3月5日号
日本の良さを知ってほしい

 「まほろば」とは「素晴らしい場所」を意味する古語だ。1300年以上も前に編纂された古事記の、倭健命が詠んだ歌で知られる。
 日本には長い歴史と伝統がある。自分たちが住んでいる国の素晴らしさを、和文化を知ることで実感してほしい――。団体名には、そんな活動への思いが込められている。
 1月に東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京の助成を受けて、初のオンライン「和の芸術祭」を開催した。屋外で実施予定だったが、コロナ禍により変更。5時間にわたって殺陣、書、ダンスなど様々なパフォーマンスを配信、約800人が視聴した。
 出演者は津軽三味線の山下靖喬、民謡舞踊の吉田成美、民謡の橋本大輝、振付師のパーツイシバ、忍者の羅希阿丸、侍の岡武蔵。いずれも数々のコンクールでの優勝や海外公演など、第一線で活躍する顔ぶれだ。
 3カ月間学んだ地域の子どもたちによる、花笠音頭の発表もあった。事前収録のため編集作業に追われたが、「地元との結びつきが出せてよかった」と満足気に眼を細める。
 榎本さん自身は足立区に生まれ、茶道師範の祖母の影響で幼少期から茶道や日舞に親しんできた。日本茶輸出の仕事でカナダを訪れた際、日本文化紹介のイベントで、「和文化は海外ですごく受け入れられているのに、日本ではそうでもない」と痛感。もどかしい思いをしていた中、書道家の米本芳佳さんと出会い「まほろば」を設立した。
 「啓蒙・継承」「町おこし」「国際交流」の3つのテーマを掲げ、商店街や海外研修センターで活動。さらに人脈の広さを活かして一流の演者に声をかけ、千住の慈眼寺で「和の芸術祭」の開催、千住神社での巫女舞の協力など、地域の文化の継承にも力を入れてきた。
 昨年10月に米本さんが千住の路地裏にオープンした和文化体験+日本茶カフェ「ろじこや」とは協力体制にあり、継続した活動の拠点を得た。「鬼滅の刃」のブームが子どもたちの後押しとなっている今、夢は広がる。
 「和文化を継承できるのは、私の世代が最後かもしれないと思うと使命感がある。海外だけでなく日本にも根付かせたい」
 3月から中央本町地域学習センターで侍の教室が始まる予定だ。