足立朝日

健康格差をなくし未来を守りたい 理学療法士が「駄菓子屋かしづき」 子ども・保護者の相談・安心の場に

掲載:2021年5月5日号
 子どもはもちろん、大人もつい引き寄せられてしまう「駄菓子屋さん」。かつてはチビッ子たちにとっての百貨店兼社交場だったが、今は町中で見ることはほとんどない。そんな駄菓子屋を健康格差解消に役立てたいと、医療従事者が新たに区内にオープン。「駄菓子屋かしづき」(加平1-12-3)が4月14日(水)から始動した。

 運営するのはNPO法人presents。代表理事の佐々木隆紘さん(34)が理学療法士の仲間とともに、2017年6月に設立。健康増進の啓発や社会参加の環境整備などの事業により、自分らしくいられるまちづくりを目指している。
 メンバーはそれぞれが医療機関で治療やリハビリ、スポーツトレーニングなどを行う傍ら、食育や子どもの心の発達支援、体づくりなどの講演や、子育てワークショップを開いてきた。幼少期の虐待や家庭機能の不全などが子どもの脳にダメージを与えることは知られているが、実は将来の様々な疾病のリスクを高めることも報告されている。
 虐待の背景には経済格差、親の子育て不安や孤立がある。しかし、講演やワークショップ
の参加者はもともと関心のある親ばかりで、必要な層に届かないことを佐々木さんは痛感。そこで、地域の子どもたちが気軽に足を運べる「敷居が低い」駄菓子屋を思い付き、1年の構想と勉強を経て実現させた。
 目的は心の拠点づくりにある。「虐待は親の心に余裕がないのが原因の一つ。保護者の不安解消や知識提供をしていきたい」と佐々木さん。子どもにとっても「地域に信頼できる大人がいると違う。駄菓子屋のおっちゃんが話を聞いてくれる、という場になれば」。子どもにとっては、限られたお金で欲しいものを選んで買い物をする、貴重な社会勉強の場でもある。
 店を切り盛りするのは、佐々木さんとNPOメンバーで妻の明日香さん(32)の2人。無償だが、いずれは助成金の申請も視野に入れている。
●高齢になっても元気でいられるように
 幼少時の精神的負担が後々、体に与える悪影響を、佐々木さんが整形外科クリニックのリハビリテーション専門職として患者に接してきた10年間で、目の当たりにしたという。
 長年の腰痛に悩みリハビリを続けても治らない患者のほとんどが、子どもの頃の家庭環境に問題があったと話す。「マイナスの言葉でダメージを受ける脳の部位と、痛みを感じる部位は似ているんです」。虐待や孤立などを体験して育つと自己肯定感が弱くなるといい、「治療で治ると思えるかどうかにかかってくる。10年前は体だけ診ていれば痛みは取れると思っていた」。まさに体と心は表裏一体。この新たな挑戦は、将来の病を予防する一歩だ。
 3月28日(日)のオープニングイベントには、多くの親子連れが来場。目を輝かせながら100円で何を買うかを悩むわが子の姿に「子どもに安心して買い物をさせられる場ができてうれしい」と喜ぶ親の声があり、滑り出しは上々。「さくら大根はないの?」と昔を懐かしむ60代の女性2人連れの姿もあり、地域の世代間交流も期待できそうだ。
 佐々木さんは「健康に不安があるが、病院に行くほどではない高齢者への助言もしたい」と話している。

【駄菓子屋かしづき】
▽営業日=毎月第2・4水曜日、午後2時~日没まで(5~10月は午後6時、11~4月は5時)、5月12・26日は午後5時半まで。毎月1回のイベントを日曜か祝日に開催。
▽講座「足が速くなる靴の履き方」=6月13日(日)午前10時~・11時~・午後2時~(各回45分/内容は同じ)、小学生対象(感染防止の人数制限により保護者同伴不可)、定員各回6人、500円(資料付き)。理学療法士・フットケアトレーナーが正しい靴の履き方や紐の結び方を教える。かしづきHPから申し込む。

写真上/子どもたちを出迎える佐々木隆紘さんと明日香さん
中/一生懸命考えてお買い物
下/お会計もドキドキ