足立朝日

キッチンカーやーい! 町おこしを呼ぶ善意の輪

掲載:2021年5月5日号
 長引くコロナ禍で、何かモヤモヤとした空気が漂う毎日だが、心がちょっとほっこりする「町の話題」を2題。いずれも、今話題のキッチンカーに出店場所を提供して町を賑やかにしようとしている人たちのお話。
《第1話》島根4丁目/元ガソリンスタンドの場所を提供する運送屋
 最初の善意の主は、磯川運送㈱=梅島2丁目=の元木達也さん(36)。このコロナ禍により壊滅的な飲食業界を手助けしようと、会社で借りている島根4丁目の約330㎡(約100坪)ある元ガソリンスタンドの土地を、この3月から各種キッチンカーに開放。曜日、時間は関係なく、使用料は2000円(税込、電気代込)。
 この場所は、ちょうど旧日光街道と環七北通りが交差する地点。隣にデイリーヤマザキ、近くにスーパー西友があって、人通りは多いものの、町としての盛り上がりは今一つ。
 元木さんがインスタグラムなどのSNSを使って、キッチンカーの出店を呼び掛けたところ、このコロナ禍でイベントがなくなり、売る場所がなく困っている人たちから、ポツポツと連絡が入った。
 千葉・松戸の唐揚屋、オムライス店、千葉の団子屋、六木のホットサンド店、葛飾・金町のおにぎり屋、北綾瀬のたこ焼き屋、文京区のハワイ料理店と8店が登録、3月中は延べ30台が出店。
 取材の日、午前11時頃からたこ焼き屋とハワイ料理店が出店すると、近所の人や近くの病院へ来たという家族連れらが立ち寄った。
 たこ焼き(8個、税込540円)を売るたこ焼き屋の塩崎貴英店主(52)は「こういう場所を提供してもらえるのは最高。しかも町に活気が出ていいよね」と話し、ハワイ大好きが高じて2年前に脱サラで起業したという村重嘉之さん(47)はガーリックシュリンプ(税込600円)を売りながら「お客さんとのうれしい出会いが沢山ある」と話す。元木さんは、「このような形で、人と人とのつながりが出来、街が賑わっていくことがうれしい。さらに頑張りたい」と話す。
【島根スペース連絡先】TEL080・3361・1986元木
《第2話》自分家の敷地を販売スペースとして提供する大谷田の会社員
 普段は駐車場として利用している敷地約20㎡を、この3月からキッチンカーなどのスペースとして提供を始めたのが大谷田4丁目の会社員・鈴木郁美さんだ。
 鈴木さんは大谷田周辺で生まれ育ち、小さい頃から私道、公園や駄菓子屋さんで遊ぶ経験を通して地域に愛着を持ってきた。以前から、自宅スペースを活用して人が集まれるコミュニティを作りたいと思うようになっていた。
 そこへこのコロナ禍。「そうだ、場所を探しているキッチンカーなどに場所を提供しよう」と思い立ち、SNSを使って告知。利用時間は、午前9時~午後9時で、料金は電気代として、1000円(税込)。「KITAAYASEシェアスペース」と言う名前を付け、準備を着々と進めた。
 すると、続々と連絡が。チキンカツ専門店、生協、ケバブ屋、お団子屋、油そば屋……。鈴木さんが、各店の出店したい日を調整し、次々と決めて行った。そのうちの一人、ケバブ屋の渡辺克知さん(38)は、近くの古紙メーカーに勤める会社員だが、元々屋台をやりたかったので、ネットで調べてケバブのキッチンカーをやっている人から、販売権を買うとともにケバブサンド作りの指導を受けた。また、資材を買いそろえ、自分で組み立て、好きなように外装・内装を施した。
 同店のケバブサンド(税込600円)はマイルドな味が売り物で、早くもリピーターが出来た。渡辺さんは、「鈴木さんのような人とこのスペースと出会え、本当にありがたい」。鈴木さんは、「出店する人は、こちらの趣旨をわかってくれている人ばかり」と、このシェアスペースの公式LINEアカウントを作り、出店カレンダーを随時更新、直接参加を呼び掛ける熱心さだ。
【北綾瀬スペース連絡先】鈴木さんのSNSかMAIL

写真上から1/元木さんを囲んで塩崎さん(右)と村重さん=島根スペースで
2/出店とともに人が集まる島根スペース
3/鈴木さん宅の駐車場スペースで、出店準備をする渡辺さん
4/会社の友人家族も応援に