足立朝日

羅針盤 VOL.116

掲載:2021年5月5日号
 酒の神様バッカスでもあっと驚くような「お酒はだめよ」の緊急事態宣言だ。
 ある居酒屋の店主。「酒を出さなければ、夜8時まで営業していいよ、なんてどこから出てきたんだろう。客が酒なしで焼き鳥ばっかり食っていられるはずがないよ」。
 飲食店ばかり責めている――と評判が悪い今のコロナ対策に、政府や都は、今度は「酒」を「敵」に付け加えた。理由の説明が全くない。
 ローマ神話のバッカスは、太陽神のゼウスと人間の間に生まれた子どもで、母親はゼウスが誤って出した炎に焼かれ、残った子宮からバッカスが生まれたという悲劇の神だ。
 今回の宣言は、その理由と線引きのあいまいさで、飲食店にはひどく評判が悪い。
 「ネオンや店の看板の明かりも消して」といった意味不明の上から目線の「命令」が輪をかけている。「戦争中の灯火官制か!」。
 「不合理や理不尽は長くは続かないよ」と付け加えた居酒屋店主の目は怒っていた。 (編集長)