足立朝日

高次脳・失語症を「サポートします」 お助け人の目印、缶バッチが完成

掲載:2021年6月5日号
 「お困りですか? サポートします 高次脳・失語」――こんな文言が書かれた缶バッチが完成した。
 作成したのは、高次脳機能障害者とその家族をサポートする団体、NPO法人足立さくら会(渕脇美佐子代表)。
 会の発足20年の節目にあたり、「災害時など、助けて欲しい時に、誰に声をかけたらいいかわからない。高次脳機能障害を知っている人に声をかけたいが、その目印があれば」という当事者からの一言がきっかけとなった。
 高次脳機能障害とは、脳の損傷により失語や記憶障害、注意障害など様々な社会的行動に障害が出るもので、性格が変わってしまうこともある。事故や脳梗塞などの病気の後遺症として現れ、誰にでも起こりうる障害だ。外見は一般の人と変わらないため理解されにくく、当事者も家族も苦しんでいる人が多い。
 さくら会は一人でも多くの人にこの障害のことを知ってもらい、当事者と家族を孤立させないようにと、活動を続けている。その一環として、8年前から毎年高次脳機能障害サポーター育成研修を行い、個々に応じた支援ができる人を増やしてきた。
 缶バッチの作成に当たっては、都市農業公園が協力した。足立さくら会の当事者会員のうち33人が、昨年8月と11月に同園で野菜の収穫体験に参加。その収穫物のうち、公園スタッフがナスをパテにしてビン詰めを販売し、売上の一部が製作費として会に寄付された。
 デザインはさくら会が出した原案を元に、公園側が制作。赤地に白い文字がくっきりと目立ち、やさしい女性のイラストとともに、当事者が一目で声をかけやすい仕上がりになった。
 缶バッチは、これまでに研修を受けて認定されたサポーター50人に配布。「災害はいつ起きるかわからない。できればいつも鞄などにつけてもらって、いざという時に当事者の助けになってほしい」と渕脇さんは話す。
 今後も研修を受けたサポーターに渡し、高次脳機能障害と失語症への社会の理解を深め、支援の輪を広げていく。

写真/缶バッチのサイズは縦5cm×横8.5cm。赤地に白の文字が目立つ