足立朝日

東京電機大学×JKK東京 学生の企画・設計によるリノベーション住戸完成

掲載:2021年7月5日号
 東京電機大学と東京都住宅供給公社(JKK東京)が2019年から連携して進めてきた西新井本町4丁目にある興野町住宅の3つの住戸リノベーションが、5月ついに完成した。
 同住宅は、昭和33年(1958)に建設されたが、今回7棟200戸の建て替えを行うとともに、20棟560戸については建物の長寿命化が進められた。その中で、長期寿命棟では若い世代の入居を図るための方策のひとつとして、東京電機大学大学院未来科学研究科建築学専攻の建築・都市空間研究室、建築設計研究室、大学内に開設しているTDU建築設計事務所と連携。空家4戸を学生ならではの新しい発想で、若年層向けの魅力ある住宅へと生まれ変わらせた。
 参加した17人の学生たちが様々な設計を考え、JKK東京の職員や同大学教授を前にプレゼンテーションを実施。最終的に川田啓介さん、加藤未来さん、藤沢裕太さんの3人の案が採用された。川田さんは「湾曲壁の隠れ家」と題し、緩やかなカーブを描く湾曲壁が南北の居室を穏やかに繋ぎ、風が通り抜ける路地のような空間を作り出した。加藤さんは「伸び縮みする家」と題し、収納を自由に開閉させることで空間の「伸び縮み」を表現した。藤沢さんは「趣味人たちの空間」と題し、隣接する2つの住戸を1つの住戸としたプランで、階段室を挟みながらも住戸を往来することで完結する生活を提案。趣味や多様な価値観をもつ人のための空間を意識し、壁面収納や吊戸棚といった魅力的な収納が充実している。
 3人はそれぞれ「改めて建築は多くの人の協力、協働の中で出来上がっていくものだと実感しました。自分の設計意図を汲み取りながら、より良いものを作ろうと協働する体験を学生時代に経験できたことはとても貴重でした」(川田さん)、「自分たちが書いた図面が実際に形になる現場を見て、感動とともに実施図1本1本の線の重みを感じました。これからこの住戸でどんな暮らしが生まれていくのか、とても楽しみです」(加藤さん)、「設計時は現在のコロナ禍はもちろん想定していませんでしたが、時代の変化で今回の間取りの弱点がリモートワークや家で過ごす時間や携帯の変化によって、強みともとれる様々な可能性がより感じられるプランになったと思います」(藤沢さん)とコメント。
 また、3人は一般社団法人団地再生支援協会主催「第17回集合住宅再生・団地再生・地域再生学生賞」を受賞。3人のリノベーション住戸は、夏以降に入居者募集する予定。

写真上/左から川田さん、加藤さん、藤沢さん


川田さん設計「湾曲壁の隠れ家」


加藤さん設計「伸び縮みする家」


藤沢さん設計「趣味人たちの空間」