足立朝日

子どもたちの居場所を作りたい 学生たちが「駄菓子屋irodori」開店 関三通り商店街

掲載:2021年8月5日号
 関三通り商店街(関原3丁目)に7月17日(土)、大学生による新たな憩いの場「駄菓子屋irodori」がオープンした。駄菓子屋が子どもたちの居場所、世代間交流の場として、注目されている。


 開店と同時に子どもたちや親子が次々に訪れ、予想以上の盛況にスタッフの笑顔が弾けた。
 元餃子店だった店舗は間口が狭いながらも奥行きがあり、奥は机と椅子を並べたオープンなフリースペースになっている。早速お目当ての駄菓子を買った子どもたちが、勉強したり、黒板でお絵描きを楽しむ姿があった。
 運営するのは、足立区と墨田区で民間学童保育の校舎を展開しているNPO法人Chance For All(CFA/関原3-15-4)の学生チーム。
 「生まれ育った家庭や環境でその後の人生が左右されない社会の実現」を目指し活動する中、多世代交流ができる居場所として、誰もが親しみやすい駄菓子屋に思い至ったという。昨年10月に始動、コンセプトやリフォームなど、学生たちがアイデアを出し合いながら進めてきた。
 資金はクラウドファンディングで、目標額の300万円を超える422万円を獲得。また、㈱ミクシィ(渋谷区)が設立した、子どもやその家族の社会的課題に取り組む団体に対して支援する「みてね基金」から、第2期助成先に選ばれた。
●「irodori」に重なる色の思いを込めて
 CFAの中山勇魚代表は、駄菓子屋の意義について話す。「確かに学童も子どもの居場所です。家庭と密接な関係を築けますが、保護者の申し込みが必要というハードルがある。駄菓子屋は子どもが来たい時に来れる子どもだけの空間。ありのままの子どもたちでいられる場で、失敗やチャレンジをたくさんして欲しい」
 実際に運営する学生チームのメンバーは9人。その代表の飯村俊祐さんは、この計画が始まるまでは駄菓子屋に行ったことがなかったが、「調べていくうちに、自分の小さい頃、近所にあったらよかったなぁ、と思うようになった」。そんな憧れも込めて、区内にある駄菓子屋に行って話を聞いたり、品ぞろえを見て研究するなど、仲間と準備を進めてきた。
 特にこだわったのが、奥のフリースペースだ。「子どもたちが何もしなくていい、目的を求められることがない場所にしたい。自由で、偶然の出会いがあるのがいい」。商店街にあることで、子どもだけでなく若者や高齢者もふらっと立ち寄れる。
 「いろいろ混ざり合った時、新しい可能性が生まれる場所にしたい」。店名のirodoriはその思いから命名された。
 飯村さんは国際系の学部だが、他のメンバーは教育や建築など専門は様々で、「それぞれ違った視点で考えられる」良さがあるという。
 大学で建築を学んでいる工藤綾乃さんが、レイアウトと空間デザインを担当。「みんなで作っていく場」をコンセプトに、テーブルや椅子だけでなく、商品棚も固定せずに可動性を持たせた。また、壁に沿って黒板を設置し、子どもたちが自由に絵を描けるようになっている。
 7月3日(土)・4日(日)には、内装ワークショップを実施。子どもたちはスタッフと一緒にペイント、床張り、家具作りを行って、自分たちの場への愛着を深めた。
●地域も期待
 オープニングセレモニーは、irodoriの目指すアットホームな雰囲気溢れるものとなった。
 関三通り商店街の豊田宏会長は「学生主体と聞いて興味を持った。若い力は地域活性化につながると楽しみにしている。地域のコミュニティの場になれば」、店舗のオーナーも「学生がここでたくさんの思い出を作ること、世界に羽ばたくことを楽しみにしている」と期待を込めて激励。みてね基金事務局の関麻里さんも駆けつけ、エールを贈った。
 この日、クラウドファンディングとともに募集した「夢のお菓子コンテスト」の表彰式も行われ、遠方の受賞者はオンラインで参加。子どもならではの自由な発想の楽しいお菓子のアイデアが披露された。
【メモ】関原3-15-3、午後2時~7時、火曜休。

写真上/オープンと同時に笑顔が溢れた
中/フリースペースの黒板で子どもたちが自由にお絵描き
下/オープニングセレモニーのテープカット。右から2番目がCFA中山代表、3番目が学生チーム飯村代表