足立朝日

羅針盤 VOL.119

掲載:2021年8月5日号
 NHKのアナウンサーが「東京の新型コロナウイルス感染者最多2848人!」の驚きのニュースを伝えている時、TV画面上に、「柔道81キロ級で永瀬が金」のテロップが流れる――。
 「こんな深刻なニュースの時に何なんだろう。少し時間をズラせばいいのに」とかなりの違和感を持って見ていた。何とも言い表しようのない頓珍漢な現下の私たちの状況を、いみじくも見せてくれた。
 朝から晩までどのチャンネルを回しても「TOKYO2020大会」。「〇〇が金!」「ニッポン、ニッポン!」の絶叫が続く。前日の試合の場面が、翌日のニュースでもこれでもかこれでもかと繰り返される。一方、新型コロナウイルスの情報は、感染者数だけが繰り返され、ワクチン接種状況のニュースはほとんど聞かれなくなった。
 何もかもが頓珍漢である。「お祭りと葬式は一緒にはできない」。私たちは、過去の至言を深く理解しなければならない。  (編集長)