足立朝日

第26回 国際車いすテニス大会 「仙台オープン2021」でシングルス初優勝 大坪 洋一 さん(61) 足立区在住

掲載:2021年12月5日号
自分に限界をつけず、できることを

 競技用の車いすを巧みに操り、ボールを追う。握力低下で握れないラケットはテーピングで手に固定し、ハンドリム(タイヤ外側の輪)はゴムでコーティングして摩擦により操作する。
 現在、国際ランキング44位。2018年に障がいレベルが重いQuad(=四肢麻痺の意味)クラスのマスターズに、最高齢の58歳10か月で初選出。これまでダブルスでは3大会で優勝してきたが、念願のシングルス優勝を果たした。
 48歳の時に膠原病の関節リウマチを発症。今も股関節が痛むが、手術すると前傾姿勢が取れなくなるため、選手でいる間は痛みと共存していく覚悟だ。「膠原病で車いすテニスをやっている人はいないんですよ」と笑う。
 始めたきっかけは、東京パラ五輪2020の金メダリスト・国枝慎吾選手からかけられた言葉だ。まだ杖歩行が可能だった50歳の時、国枝選手のトークショーで自身の病について話したところ、「車いすテニスは何歳からでも自分次第で楽しめます」と返ってきた。
 それを我が身で知ることができたのは4年後、関節変形が進んだ両膝を人工関節に置換する手術を受けてからだ。軽い気持ちで挑戦したが「まさか選手としてやるとは。なかなか勝てないことが悔しくて」。
 始めは負けず嫌いが原動力となったが、続けているのは「50代半ばから始めて、上達するのが楽しくて」。会社勤めでは出会う機会のなかった、日本や海外の様々な年齢、職業の人たちと知り合えたことが、かけがえのない宝となっている。
 練習は週に1、2回、貴重なハードコートのある上沼田東公園で、世田谷区在住の競技仲間と汗を流す。「練習相手がいて恵まれている」という一方で、厳しい現実もある。自費での世界大会への渡航が難しいため、なかなかランキングを上げることができずにいる。「トップクラスの選手を目指すために、少しでもランキングを上げ、企業や個人から支援を受けられるように結果を残したい」
 61歳。競技人生はまだ7年で、短いと語る。「自分にリミット(限界)をつけない。できないのではなく、どうすればできるかを考える」。負けず嫌いの力強い眼差しが、前を見据えている。