足立朝日

廃プラを活用し、プラスチックアートを作る 渡邉 勇夫 さん(69) 一ツ家3丁目在住

掲載:2022年2月5日号
「汚れた海、何とかせねば……」
と立ち上がる


 例え一人でも環境浄化の活動はやめない、と宣言する意志の強い人である。
平野1丁目にある㈲渡邉技研工業で刃物研磨業を続ける傍ら、廃プラスチックを材料に、昨年度は「足立の花火」「月に光る富士」(写真)など16点のアートを製作。「月に光る富士」は昨年2月開催の新国立美術館の展覧会で入選。その出来栄えは、審査員に「こんなに手の込んだ作品は初めて」と言わせた。
 今は次の区主催「地球環境フェア」に向けてさらに大きい作品に挑んでいる毎日。渡邊さんは、頭の中にテーマを描き、プラスチックの削りカスを材料にして、これをキャンパスの上に置き、ボンドで少しづつ貼り付けて成形していく。
 このプラスチックアートを始めるきっかけになったのは、テレビや新聞報道で捨てられたプラスチックやビニール製品などにより海が汚染されているのをつぶさに見たこと。納品先の製造業者がプラスチックの屑を排出することを聞き、それをもらって作品に仕上げようと思い立った。作品を見て多くの人に「環境問題に関心を寄せて欲しい」という思いだ。
 「足立の花火」は、ナイアガラの滝の部分を流れるように作るのが難しく、廃プラの材料を変えたりして5回も作り直した。
 渡邉さんは、足立区と姉妹都市提携をしている栃木県鹿沼市生まれ。18歳で上京し、当初は、梅島にある木工所に住み込みで働いた。その後、平野1丁目にある研磨会社に勤め、技術を習得した後、25歳で独立、今の会社を興した。
 渡邉さんには絵心がある、と評価した友人の薦めで、この2月9日(水)~21日(月)に国立新美術館で開催される「新槐樹社展」に30号の絵「凍りの池」「恥じらい」「火球」の3点を出展する。いずれも力の入った作品だ。
【メモ】㈲渡邉技研工業=TEL3885・3243