足立朝日

高齢化社会に貢献19年 「ことば教室」主宰 押尾 博光 さん(79) 千住在住

掲載:2022年8月5日号
押尾コータローの父
区内で活躍


 高齢化が進む足立区で、「人の役に立ちたい」と願い、認知症予防を目的とした「ことば教室」の講師を、梅田住区センター(梅田6‐26‐1)で19年間継続している押尾博光さん――。
 3年前まで、大手保険会社の代理店3店舗の経営者であった経歴を持つ。「時代の進運を察知し、世の進歩に遅れぬこと」を信条に販売に貢献し、何度も社から表彰された敏腕社長であった。その業務の傍ら、結婚式のプロ司会者としても活躍。多くの幸せなカップルを送り出す中で、自分の得意とする「しゃべり」により、世の中に貢献したいと切望。認知症について独学を極め、遂に「ことば教室」主宰に至った。そこでは楽しいゲームをはじめ、数々の押尾メソッドを通じて、記憶をつかさどる脳の器官「海馬」の活性化を図る。毎月第1・第3月曜日に開催される年間講座で、コロナ禍を考慮して定員は15人に限定。毎年3月に同センターで公募があるが、人気講座のため今年も抽選となった。
 押尾さんの活動はそれだけにとどまらない。現在、公益財団法人日本尊厳死協会に所属。「尊厳ある死」をどのように自己決定し、「平穏死」「自然死」による最期を迎えられるかについて多くの人々に説く。
 そして何よりも驚くのは、押尾さん(以下、博光さん)は、ギタリスト・押尾コータローさん(5面「ハイライト」参照)の父親であることだ! コータローさんが中2でギターを始めてプロへの道を志した頃、「頑張れという気持ちと、この世界で食べることは厳しい、諦めろという気持ちが半々だった」という。しかし、インディーズ時代に多くの困難を乗り越えて精進するコータローさんの姿を見て、「プロでやっていける!」と確信した。今では「一番のコータローファン」として、息子に熱い視線を送る。
 舞台上でのコータローさんは饒舌だが、父親の前では寡黙で、時間さえあればギターに触れているという。「それがプロというもの。私の活動は3つ。ことば教室と尊厳死の啓蒙と、押尾コータローの追っかけ」と博光さんは朗らかに笑う。それに応えるように、コータローさんは毎年、どんなに多忙でも父親のために会食の場をセットする。「8月も一緒に鰻を食べるんだよ」――博光さんのこぼれる笑顔には「自身で道を切り拓いたコータローさんへのリスペクト」、そして「その父であることの喜び、愛情と誇り」に満ち溢れている。
 今はただ、メジャーデビュー20周年を迎えた息子の、自分が住む足立区での初のコンサート成功を祈り続けている。

写真/親子ツーショット