足立朝日

俳句とともにあった人生 あだち俳壇選者 柴原保佳氏 死去

掲載:2022年9月5日号
 長年にわたって足立朝日の「あだち俳壇」選者を務めてきた柴原保佳氏が、8月14日(日)、死去した。89歳だった。告別式は18日に柳原の葬儀所で執り行われた。
 社交的で美食を求めて精力的に出歩き、晩年も氏を慕う多くの人と交流を深めていたが、2年ほど前から体調を崩しがちになり、入退院を繰り返していた。療養中もベッドで選句作業を行うなど、俳句とともにあった。
 昭和8年、千住旭町に生まれ、地元の足立学園在学中は、恵まれた体格を生かして野球部で活躍。家業を継いで、和雑貨やカレンダーを扱う「はせきよ商店」(閉店)を学園通りで営み、商店街や地元の人に親しまれてきた。
 元々は扇子を扱う旅商で、父に同行して各地を歴訪。その土地土地の人々との交流や風景に触れ、豊かな感性と知見を広めた。
 「ホトトギス」会員の父の影響で幼少時から俳句に親しみ、高校時代に句作を開始。明治大学在学中は土屋文明に師事、高浜虚子とも出会い、その子、年尾、立子からも学ぶ。昭和42年にホトトギス同人。日本伝統俳句協会理事を経て、顧問に。
 NHK学園、NHK文化センター水戸支社の俳句講師を務め、BS-NHKの俳句番組にも出演。区内では千住と舎人で定期的に指導していた。
 句集「旅商春秋」、写生文集「紐育のおとうと」(2001年/朝日新聞社)、「六月からのカレンダー」、「筑波の見える風景」(2018年/ウエップ)を出版。自然体で綴られた文章に、あたたかく穏やかな人柄が滲み出る良著を残した。

写真/5年前に「芭蕉翁顕彰の集い」で講演した柴原氏