★「祝祭の子」逸木裕著/双葉社/2035円(税込)
これまでの逸木の作品とは全く別のミステリーが誕生した――。
山梨の宗教団体「褻」で起きた大量殺人事件が世間を震撼させた。かつての学生運動時代を生きた団体トップが、コミューンで戦闘要員として育て上げた子どもたちに命じた殺戮である。宗教と暴力に洗脳された子どもたちは、厳しい社会の目にさらされて影のように生きてきたが、14年後に再会し、再び過去に引き戻される。彼らの運命は――。
著者の本に巡り合うたびに思うのは、「逸木裕という作家は、まるで俳優のごとく、自由自在に登場人物を生きている」ということである。老若男女に関わりなく、その人物の中に入り込み、内面をえぐり出す作業は、相当に辛いものであろう。それが善であろうが悪であろうが、共感しながら、あるいはクールな目線で人物を創りあげていく力が並外れている。
さらに驚くのは、著者が生きたはずのない時代をも、まるで自身が存在していたかのようにリアルに表現する力量である。プログラマーとしての側面をもつ著者だからこそできる緻密なストーリー展開と文章構成に、唸らずにはいられない。そして、どのような暴力的な場面があろうとも、負を消し去る「日本語の美しさ」に圧倒される。
それらに実際に触れ、「読書の楽しさ」を存分に味わってほしい秀作だ。物語の最後に登場する「男女、そして車椅子の女性」は、もしや?
これまでの逸木の作品とは全く別のミステリーが誕生した――。
山梨の宗教団体「褻」で起きた大量殺人事件が世間を震撼させた。かつての学生運動時代を生きた団体トップが、コミューンで戦闘要員として育て上げた子どもたちに命じた殺戮である。宗教と暴力に洗脳された子どもたちは、厳しい社会の目にさらされて影のように生きてきたが、14年後に再会し、再び過去に引き戻される。彼らの運命は――。著者の本に巡り合うたびに思うのは、「逸木裕という作家は、まるで俳優のごとく、自由自在に登場人物を生きている」ということである。老若男女に関わりなく、その人物の中に入り込み、内面をえぐり出す作業は、相当に辛いものであろう。それが善であろうが悪であろうが、共感しながら、あるいはクールな目線で人物を創りあげていく力が並外れている。
さらに驚くのは、著者が生きたはずのない時代をも、まるで自身が存在していたかのようにリアルに表現する力量である。プログラマーとしての側面をもつ著者だからこそできる緻密なストーリー展開と文章構成に、唸らずにはいられない。そして、どのような暴力的な場面があろうとも、負を消し去る「日本語の美しさ」に圧倒される。
それらに実際に触れ、「読書の楽しさ」を存分に味わってほしい秀作だ。物語の最後に登場する「男女、そして車椅子の女性」は、もしや?











