足立朝日

「市川森一脚本賞」 10年の歴史に幕 同財団が 特別表彰される

掲載:2023年3月5日号
 日本放送作家協会・故市川森一元理事長(シアター1010前館長)の功績をたたえ、同氏の志を繋ぐため、2012年に設立された「一般社団法人市川脚本賞財団」が、1月末に解散し、同脚本賞も10年の歴史に幕を閉じた。同賞の選考対象である「オリジナル作品」は、時代と共に減少。選考困難により、同財団は一定の役割を果たしたことで今回の決断に至った。
 これまでに受賞したプロの脚本家は、大島里美・浜田秀哉・バカリズム・宇田学・足立紳・黒岩勉・金子茂樹・野木亜紀子・玉田真也・倉光泰子・加藤拓也各氏。さらに活躍の場を広め、例えば黒岩氏は「TOKYO MER~走る救命救急室」、野木氏は「獣になれない私たち」などでドラマ界に貢献している。
 その最後の催しとして昨年12月17日・18日、市川氏の故郷・長崎県の長崎歴史博物館で作品上映とシンポジウム「市川森一が愛した『ふるさと・長崎夢物語』」を開催。長崎にまつわる同氏の9作品を上映する他、シンポジウムでは共に仕事をしたプロデューサー・ディレクター、市川作品で主演を務めた女優の三田佳子さんが登壇し、市川氏の作風や郷土愛、人柄などについて語り合った。
 また、2月7日~9日に石川県七尾市で開かれた「アジアテレビドラマカンファレンスin能登」で、同カンファレンスを主管する一般社団法人ATDCが同脚本賞財団の功績をたたえ、杉田亮毅理事(日経新聞参与)を代表で特別表彰した。同カンファレンスは、市川氏が生前、アジアのドラマ文化発展のために韓国文化産業交流財団(KOFICE)のシン・ヒョンテク会長らと設立。2006年から東アジア各国で開催している。
 市川氏の妻で理事の市川美保子(女優・柴田美保子)さんは、次のように想いを述べた。「市川の志は、脚本賞受賞者の皆さんに受け継がれ、カンファレンスから表彰いただいたことで実を結びつつあります。日本のドラマ作家のさらなる飛躍を心から祈念し、応援してくださった全ての皆様に心から感謝いたします」

写真/長崎のシンポジウムで語る市川理事