足立朝日

スマイリーキクチ氏講演 ネットの「被害者」「加害者」に ならないために

掲載:2023年4月5日号
 インターネット(ネット)上でのトラブルは、生活や生命を脅かされる事態に発展することもある。今の子どもたちは生まれた時からネットがある環境に育ち、その距離が親世代より近い。
 足立区出身のタレント、スマイリーキクチ氏(51)が3月26日(日)、足立区生涯学習センターの講座で「知らなかったでは済まされないネット上の誹謗中傷と罰」をテーマに講演した。
 キクチ氏は足立区内で起きた凶悪事件の犯人と決めつけられ、ネットの誹謗中傷と23年にわたって闘ってきた。現在は一般社団法人インターネット・ヒューマンライツ協会代表も務め、全国で公演活動を行っている。
 挨拶で「スマイリー」の由来となったモットーの笑顔が、「笑っていればどうにかなる」との祖母の教えにあることを披露。その人柄で参加者の心を掴み話を進めた。
 「ここ数年、人と接する時間よりインターネットと接する時間が多くなっている」と指摘。ネット中傷による自死の事例を数件挙げ、「ネットを見なければいい、ではない。見なくても『書かれているんじゃないか』と想像して追い詰められてしまう」。加害者と疑われれば、ユーチューバ―が家や学校、職場に来て、容易にネットリンチの状況が出来上がる。「中傷や炎上は自分の想像を越えます」と力を込めた。
 中傷や脅迫を受けた場合の対処も伝授。証拠となる書き込みは全てスクリーンショット(画像保存)で保存し、警察の「刑事課」に相談すること。その場合、事前に電話をして対応可能な担当刑事にアポイントを取る、証拠資料はプリントして持参、被害状況のプレゼンを予行演習しておく、など具体的だった。
 加害者にならないためには「正義感を疑うこと」。「誰かを吊るし上げることが正義になってしまっている」と警鐘。デマに惑わされないために、「検索」と「検証」をセットで行うこと、また、「リツイートは借金の連帯保証人と同じ」と安易な情報拡散への注意を促した。
 言葉は凶器となる一方「人を生か
して励ますこともできる」。キクチ氏が何よりもうれしかったのは友人や先輩からの励ましだったそう。「中傷への最大の仕返しは自分が幸せになること。ハングリー精神が育まれた足立区に生れて良かった」と自身のたくましさに破顔した。
 講座に母親と参加していた第六中学校3年の男子生徒は、昨年7月にキクチ氏が母校で講演した際に感銘を受けたそうで、今回も「ためになった」と真剣な面持ち。講演終了後に後輩から挨拶されたキクチ氏は、思わぬ再会を喜び、六中時代の思い出話に花を咲かせる一幕もあった。
【メモ】警察相談専用電話「#9110」番

写真/キクチ氏の話に参加者は熱心に聞き入っていた=生涯学習センターで