足立朝日

シンガーソングライター 下町ノ夏 さん 足立区出身

掲載:2023年7月5日号
あたたかい歌声で街を綴る

 しっとりと柔らかく広がっていく歌声。懐かしさを感じさせるサウンドに乗せて、澄んだ高音と包容力ある低音を合わせ持った響きは、肩の力をふっと軽くしてくれる。
 ファンは80年代のシティポップを知る世代だけではない。台湾では4月に発売した2ndアルバム「Cobalt Time」がヒットプレイリストにチャートインするなど、男女問わず20~30代の注目を集めている。
 個性的な名の由来は、「下町の夏生まれだから。夏が好き」。ソロを始めた当初は「SAKI」だったが(現在はバンド「OPUS」活動時の名義)、「絶対誰とも被らない名前にしたい」と改名した。
 「足立区出身」をここまで公表しているアーティストは珍しい。「足立区を知っている人がいると、やっぱりうれしい」。10代の頃は都心へのアクセスが不満だったが、今は「帰ると落ち着く」かけがえのない地元だ。2018年には1年間、北千住ルミネのインスタグラムのモデルも務めた。
 中学時代に「ゆず」に憧れてギターを始め、荒川土手でクラスメイトと歌った。将来は雑貨店を開きたいと専門学校に進むも、高校の同級生の誘いでバンド結成を機に音楽の道へ。解散後、山下達郎の曲でシティポップを再認識。その魅力を「海外のサウンドと歌謡曲のメロディーの融合。日本にしかない」と語る。
 等身大の視点を思わせる歌詞は、何気ない日常からイメージを膨らませる。「街に出ないと作れない。散歩がすごい好き」。そうして切り取られた風景の中で物語が息づく。「私が東京から出て住んだことがないからこそ、書ける曲があると思う。地方の方が東京に来た時に何かを感じ取ってもらえたら、曲として成長できるかな」
 活動で大事にしているのは「お客さんが楽しんでくれるかどうか」。コロナ前は「お客さんと小旅行」をテーマに銭湯や牧場、荒川都電を1両貸切るなど、様々な場所でのツアーを実現した。
 足立区でのライブも模索中。「ギャラクシティのプラネタリウムや生物園とか面白いですよね。うちでやれますよ、という方がいたらうれしい。学校でもやれたら」。目下の野望は「光の祭典」出演。「足立区でもっと音楽を盛り上げていけたら」。あどけなさと力強さの同居する輝く笑顔に、足立区発の歌姫の予感が弾ける。