足立朝日

120mの高層ビルも 北千住駅東口に再開発計画 銭湯を含む北側一帯

掲載:2023年8月5日号
 北千住駅東口駅前の再開発が計画されている。7月5日(水)に足立区が開いたエリアデザイン調査特別委員会で、再開発ビルの規模やスケジュールが公表され、来年2024年12月の都市計画決定を目指すとしている。

 駅を背に右が南街区、左が北街区で、それぞれ再開発準備組合が事業主体となっている。今回発表されたのは北街区で、事業協力者は三井不動産レジデンス、トーショーHD、大成建設。
 再開発ビルは高さ約120m、延床面積約5万1000㎡で、住宅(約400戸)や商業施設、子育て支援施設などが入る複合施設が計画されている。駅前の道路を現在の7mから12mに拡幅し、400㎡の駅前広場、駅直結のデッキを設けるとしている。
 区は2012年の東京電機大学キャンパス設置に伴う通行量増加に対応するため、駅前から交差点までの道路を両側に2・5m拡幅する計画だったが、一部地権者の同意が得られず着手されないままになっていた。
 2020年にまちづくり構想を変更。高層ビルを含む再開発計画で、高さ制限が100mから120mに、商業施設誘致、水害時の垂直避難場の確保などが盛り込まれた。
 西口エリアがルミネやマルイ、街中にも複数の大型商業施設があるのに対し、東口エリアはゼロ。駅前の混雑解消と利便性向上、多くの人の流入による活性化を期待するものとなっている。
◆銭湯がなくなる?
 だが、利点ばかりではない。再開発エリアはこれまでのような大型施設跡地ではなく、店舗や民家がある場所だ。
 北街区は面積5350㎡で、日の出町団地近くまで含まれる。エリア内には築約50年の建物を再利用した立飲み屋、自宅兼店舗の焼き菓子店、行列のできる飲食店など、内外に人気の店が多い。チェーンではない個人店が複数あり、地元のインターネットラジオの拠点もある。バラバラな個性が味を生み出している一帯が失われることになる。
 特に地元への影響が大きいのは「梅の湯」だ。銭湯はここ数年、健康増進施設や地域コミュニティの場として、価値や役割が見直されている。特に高齢者の心身の健康維持への貢献は大きい。
 足立区では高齢者向けの銭湯イベント、親子入浴の実施、冊子の発行など、銭湯を福祉施設、観光資源と位置付けてきた。また足立浴場組合とは、災害時に井戸水を提供する協定を締結。銭湯は区の貴重な資源の一つだ。
 梅の湯は1955年築の宮造り建築で(創業は1927年)、後継者もいる未来ある銭湯だ。これほど駅に近い立地は珍しく、水質の良さもあって若い女性客も増えている。区内の銭湯が年々減少する中、地域の宝の喪失となるだろう。
 区はあくまで再開発は民間の準備組合の事業としているが、「民間に丸投げで説明がない」「再開発は寝耳に水。終の棲家と思って建替えたのに、どうしたらいいのか」と不信感を募らせている地権者、日照や風害を心配する住民もいる。南街区は多くの地権者が再開発に反対していて、計画が進んでいない状況だ。
◆まちの未来を考える
 千住在住で地域活動をしている会社員の男性(55)は「ここは下町で近所の人との助け合いがある。いろいろな人が積み上げてきたものがリセットされて、どこにでもある風景になってしまうのがいやですね」。千住に惹かれて移り住み、地域のために活動をしている若者は多い。「地元が好きな人や大学の先生を入れて計画しないと、良いものができないのでは」
 例えば銭湯はそのまま残し、その一角を取り囲んでビルを建て、調和を図る方法もあるのではないか。電大前ロータリーをイベント広場として活用し、交流の拠点にするのはどうか。まちづくりの模索が求められる。
 千住は新しさと古さが混在することで、レトロな街の景色が若い世代を引き寄せている。自分たちの住む街をどのようにしていきたいのか。利便性だけでなく、一人一人が考えていきたい。

写真上/再開発ビルのイメージ図(令和3年7月時点)
=再開発準備組合発表資料
中/混雑解消が課題となっている駅前
下/「梅の湯」。駅直近の銭湯は希少