足立朝日

ギャラクシティのプラネタリウムで解説 ウクライナ人プラネタリウム解説員 オレナ・ゼムリヤチェンコ さん(31) 竹の塚在住

掲載:2023年10月5日号
ウクライナに平和の星空を取り戻したい

 ロシアに領土を蹂躙されているウクライナ人の中には、足立区に避難している人がいる。オレナ・ゼムリヤチェンコさんは、その一人。オレナさんは、昨年2月まで、ウクライナ・ハルキウのプラネタリウムで解説をしていた。そこへ、いきなりのロシアの侵略。プラネタリウムは閉館となり、オレナさんは、鉄道技術者である夫と一緒に逃げた。
 困惑の中で、仲間から「日本大使館から避難民を受け入れる用意がある、という話があった」と聞いた。日本には知人もいなかったが、「とにかく仕事がしたい」と4月30日に来日。大使館が出迎え、ホテル暮らしを経て紹介された足立区のアパートに避難したのが8月。
 新たな活動の始まりだ。最初に訪れた千葉県船橋市のプラネタリウムから、足立区のギャラクシティまるちたいけんドーム(プラネタリウム)でディレクターをしている田部一志さん(67)を紹介された(5面「ハイライト」参照)。
 年が明けた2月、ギャラクシティで行われた国際科学映画祭で、オレナさんは、約170人の観客を前にプラネタリウムの解説を行った。もちろん通訳付きのウクライナ語で。
 8月26日(土)、テーマが「ウクライナの空の下で」(北緯49度のハルキウから見られる星空)になった3回目は、冒頭部分の解説をこれまでに覚えた日本語で初めて行った。感極まったオレナさんの日本語に、観客は熱烈な拍手を贈った。
 オレナさんは「住んでいるアパートにも、近所の方がお菓子や食べ物を持って来てくれたり、情報をくれたり……。とても親切に優しくしてくれて、感謝し切れない」と語る。
 11月5日(日)、西新井ギャラクシティで、4回目の解説が予定されている。戦争はいつ終わるかわからないし、いつ親族が待つウクライナに帰れるかもわからない。オレナさんは手作りのウクライナのお守り「モタンカ」を抱いて「帰るまでに日本語をマスターし、必ず日本人と足立区民に恩返しをしたい」と話した。