足立朝日

NPO法人「楽学の会」20周年 北野大氏が環境の特別講演 温暖化対策に和の知恵を

掲載:2024年3月5日号
 「あだち区民大学塾」のNPO法人あだち学習支援ボランティア「楽学の会」が昨年、法人創立20周年を迎えた。2月12日(月・休)に学びピアで、足立区出身・在住の北野大氏による、20周年記念特別講演会を開催した。

 同会は1996年、区主催の足立区民大学「生涯学習ボランティア養成セミナー」の受講修了者の有志により、足立区生涯学習ボランティアグループとして発足。2003年に法人の認定を受けた。
 「あだち区民大学塾」(6面に講座情報)は、「区民が学ぶ・教える・創る」をコンセプトに、区、区教育委員会との3者共催。主に足立区在住の専門家を発掘して講師に招き、文化、歴史、経済、芸術など多彩なテーマで、1講座につき1~4日にわたり実施している。これまでに285講座、延べ2万6000人が受講。いくつになっても学びに興味を持つ人々にとって、大切な場となっている。
 ニーズがある一方で課題もある。代表理事の篠原英也氏によると、コロナ禍で講座の開催が制限され、ボランティアに参加できない会員の増加、高齢化が進んでいる。今後は新人会員を確保し、25周年に向けてアイデアや実行力のパワーアップを図りたいという。
●特別講演「現代の環境問題について」
 北野大氏(秋草学園短期大学学長/工学博士)は、経済産業省・化学物質審議会委員、環境省・中央環境審議会委員などを歴任してきた環境化学の専門家。区民にとってはビートたけし氏(映画監督・北野武氏)の兄としてもおなじみで、会場の研修室は定員の80人でいっぱいになった。
 北野氏は環境問題を軽快な語りで、わかりやすく解説。高度経済成長下では工場による公害の「産業型環境問題」だったが、現代は一人ひとりの活動に直結する「都市型・生活型環境問題」に変わったこと、先進国と発展途上国間の恩恵の不公平感によって、問題解決の道筋が複雑であることが語られた。
 気候変動による異常気象や自然災害は、経済社会の不安定化を招き、暴動や内戦などに繋がると懸念。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2030年までに世界の二酸化炭素排出量を半減させる必要があるとしているが、日本はいまだにエネルギーの多くを化石燃料に占めており、削減目標の達成が難しい現状にある。
 再生可能エネルギーには太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、バイオマスなどがある。「日本では洋上風力が、これから最も期待できると私は考えている。地熱もいいが、温泉地に近いため反対の声が出る」と北野氏。個々ができる温暖化対策としては、打ち水、緑のカーテン、建物の西側に落葉樹を植える、湯たんぽといった和の知恵を提案した。
 身近なことから国家間の課題まで広く網羅した内容ながら、時折、飛び出す弟・たけし氏の話題に参加者から笑いが起き、参加者たちは充実した時間を堪能。「勉強になった」と満足そうだった。

写真上/講演後、会員で北野氏を囲んで=学びピアで
中/環境問題を語る北野大氏=同
下/20周年記念誌。講演参加者に配布された