足立朝日

東京未来大学学長・心理学者 多湖 輝さん(81歳)

掲載:2007年6月5日号
東京未来大学学長・心理学者
多湖 輝さん(81歳)

 年齢を聞いて、その若々しさに驚く。柔軟な思考力を養い、脳を鍛えるトレーニングを記した自著『頭の体操』は、初巻発行から40年を経てなお、多くの人々を惹きつけている。
  この4月に誕生した足立区初の大学・東京未来大学の学長に就任。若者たちとの情報のギャップに苦慮しながら、講義も受け持つ。

足立区から教育発信を
 子ども心理学科など保育士養成コースのある同大が育てるのは、学生だけではない。その学生たちが将来関わる幼児たちの未来をも担う教育機関だ。それだけに、政治家や大企業の不祥事など、日本の現状を憂える。
  「子どもたちが本当に今の大人を尊敬できるのか。ああなりたいと憧れるのはスポーツのトップ選手ぐら
い」。多湖氏は以前から石原都知事が進める「心の東京革命」の推進協議会会長として、子どもたちの心の改革に取り組んできた。今のままの日本人では、いずれ諸外国から取り残されるとの確信からだ。
  「自分のためだけでなく、社会のために人に奉仕する、、という一番基本のところを教えないと」。それは幼いほど身につく。幼児教育の重要性はそこにある。
  戦争を知る世代として、日本の変化をつぶさに見てきた。多くの戦死者と残された人々の悲惨な光景は、今も目に焼き付いている。
  「そりゃあ、ひどいもんでしたよ。それを忘れてしまうんだから、日本人は不思議」。言葉の端々に過去の重みと、やりきれない哀切が響く。
  「今の世の中は僕からすればバラバラ。家族という一番小さな単位でさえ。一緒にご飯を食べることをしない、これが家族といえるのか」。先達が築いてきた日本の良さを伝えたいとの想いで、真摯に教育現場に臨む。
  「僕が足立区でやりたいと思っているのは、地域と密着しながら教育の世界を変えていくこと。足立区を最先端のモデル地区にできれば、そこから東京全体、日本が変わっていける」
  希望を語る多湖氏の微笑には、深い愛情が滲む。