足立朝日

この本

掲載:2024年5月5日号
★「東京六大学野球人国記」(丸山清光著/鳥影社/2970円(税込)
大学時代の野球部恩師・島岡吉郎監督のことを書いた「なんとかせい! 島岡御大の置き手紙」(文藝春秋企画出版部
・2020年)、そしてその増補版を3年後に出した著者が、その集大成ともいうべき3刷目の東京六大学野球本を出した。六大学野球が始まって間もなく100年というこの時期にふさわしい、全538頁の大冊。
 本書には、激動の明治、大正、昭和を乗り越え、この1世紀に東京六大学野球に関わった人たちが、あの人も、この人もと次々と登場する。
 100年を超える6校のメンバー表、春季・秋季の順位賞、ベストナイン、タイトル獲得者、歴代監督の一覧などなど、筆者が集めた膨大なデータは驚異的である。しかも、そのデータをただの文字や数字の羅列にさせない著者の野球への思いが、全体にほとばしる。
 また、各年の先発メンバー表には、当時の社会的、政治的事件が記され、その年がどのような年であったかを知ることが出来る通年史となっていることが印象的だ。
 ちなみに、著者の丸山清光氏(70)は明大に入り、野球部に所属して島岡吉郎監督の下で六大学リーグに優勝3回。主将・エースとして活躍した1975年(昭和50年)には、江川卓擁する法政を破って春秋連覇した強者だ。