足立朝日

羅針盤 VOL.156

掲載:2024年9月5日号
 「あかあかと日はつれなくも秋の風」――。これは松尾芭蕉が、あの「おくのほそ道」の旅で、8月29日(陰暦7月15日)に石川県金沢にて詠んだ句。「季節を無視するように、真っ赤な夕日が照りつけている。だが、風はさすがに秋の風だ」(角川書店訳)ということのようだが、300年以上前はこんな気候だった。
 猛暑、熱暑、炎暑、酷暑……。どんな漢字を使っても「まだ言い足りない」くらいの「猛暑」が続いて来た7、8月。この新聞が出る9月5日には、猛暑は収まって「秋風」なんて言葉が出て来ているかな!?
 「昨夏も猛暑だった」ことを思い出し、去年の日記を引っ張り出して見たところ、7月10日(月)に「都心35度の猛暑」の記載があり、以来9月19日(火)まで「猛暑」の文字が躍っていた。確かに去年も暑かったのだ。
 「人間は『忘れる動物』である」と確か誰かが言っていたが、小生なんか、あらゆることをずっと忘れっぱなしで生きて来たので恥ずかしい限りだ。
 小生も「猛暑」「酷暑」としか言えない自分を忘れて、こんな句が詠めるようにせいぜい精進したいものだ。 (編集長)