足立朝日

東京足立病院 屋上で養蜂 「一粒の麦」でハチミツのお菓子販売も

掲載:2025年5月5日号
 東京足立病院(医療法人財団厚生協会/保木間5)が、病棟屋上で養蜂の挑戦を始めた。支援しているのは、ビルの屋上でミツバチを飼う活動をしているNPO法人「銀座ミツバチプロジェクト」(銀ぱち)。
 同病院は急性期治療を中心とした地域精神医療に加え、長期在院者や高齢化の進む外来患者への福祉的・介護的支援により、地域を支えている。病院そばで就労継続支援B型事業所であるイタリアンレストラン「一粒の麦」も運営。精神障害のある人たちの就労を支援しようと2004年にオープンしたもので、昨年開設20周年を迎えたのを機に、新たな地域との関わりを深める企画として養蜂のプロジェクトが立ち上がった。
 発案したのは病院事務局長の二瓶圭一さん。ミツバチは性格が穏やかで、巣が壊されるなどよほどのことがなければ人を攻撃することはない。以前の職場で福祉農業に関わった経験から、「蜂が地域との接続点になるのでは」と考えた。「一粒の麦」の責任者で現場のプロジェクトリーダー・浅野敏明さんに相談したところ、花畑に個人でやっている養蜂家がいることもあり、話が進んだ。
 都市型養蜂に取り組んでいる千葉商科大学の教授に紹介され、銀ぱちを訪問。出迎えてくれたメンバーが、なんと相談を検討していた花畑の養蜂家・福原保さんだった(「ピープル」で福原さんを紹介)。「銀ぱちのメンバーだと知らなかったので、驚きました」と二瓶さん。
 冬場に花がなくなる農村部と違い、都市部は一年中、庭先などで花が咲いていて、意外にも養蜂に適した環境という。ミツバチの行動範囲は3㎞ほど。公園の多い足立区は蜜を集めやすく、同じ保木間にある生物園でも、養蜂に取り組んでいる。
 桜が咲き始めた3月26日、病院職員や銀ぱちメンバーらが出席して病棟屋上で放蜂式が開かれ、約2万匹の蜂が放たれた。設置された4箱の巣箱の管理は、1年前から福原さんの指導を受けてきた有志職員が交代で行っている。
 年間の収穫量は250㎏ほどの予想で、5月前半に初の採蜜を予定。それを使った商品開発も進めている。お菓子作りに手を挙げたのは、福島県でオーナーパティシエをしていた男性看護師。二瓶さんも同県出身で、偶然、その洋菓子店で購入したことがあるという。銀ぱちも福島とは以前からつながりがあり、震災時から数々の支援を続けているなど、今回のプロジェクトは福島と蜂を巡って不思議な縁で結ばれている。
 屋上産のハチミツを使ったお菓子は「一粒の麦」で6月ぐらいから販売する。患者らも瓶詰やラベル貼りなども含め、製造に関わっていく。いずれはミツバチの数を増やし、特産品として区のふるさと納税の返礼品に選ばれることを目指している。
 二瓶さんは「都市部の精神科病院での養蜂は、おそらく初めて」と話し、ハチミツの抗菌作用を生かした高齢者の口腔ケアへの利用も模索。また、文教大学(花畑)の学生たちも協力して、養蜂を進めていくことになっている。
【メモ】「一粒の麦」=週3日営業(木・金・土の午前11時30分~午後3時)、花畑4-34-16(東武バス 竹15系統「団地入口」下車徒歩1分)、TEL5242・8807

写真上/屋上で放蜂式が行われた=東京足立病院で(写真提供)
下/これから蜜集めに飛び立つ蜂たち