郷土博物館が4月26日にリニューアルオープンした。オープン当日にはオープニングセレモニーが開催され、区立谷中中学校の吹奏楽部の演奏、地元町会によるお囃子や流し踊りがあり、初日を盛り上げた。
1階ホールに設けられた美術品展示スペースには、幕末に活躍した足立にゆかりのある文人・絵師たちの絵が並ぶ。
これまでと異なるのは「ストーリーのある展示」。単体で価値が見いだされる美術品でありながら、「足立」で生きていた人と人とのつながりにも注目し、描いた人の背景や暮らしにまで広げている。地元と作品が生まれた背景がわかるのが特徴で、他の美術館にはない試み。「美術の展示ではあるけど、美術の郷土史」と同館学芸員の荻原さん。
江戸後期の画家・谷文晁の「波濤龍雲図」は、正月の描き初めとして弟子の舩津文渕に贈ったもの。文渕は武蔵国足立郡渕江領上沼田村(現在の江北)の豪農で、師と同じ並びに「猛虎図」が展示されているのが味わい深い。
分渕は日記に絵の依頼者や交流などを細かく記しており、詳細が残っている。千住琳派や酒合戦など、当時の人々が有名絵師と直接交流するだけでなく、自らも筆を執っていた文化・芸術の豊かさを、展示から見ることができる。
実は足立区立郷土博物館(以下、郷土博)の浮世絵コレクションは、同館での展示に留まらない。5月24日(土)~10月5日(日)、長野県・小布施の「北斎館」で、「知られざる秀逸コレクション 東京・足立区立郷土博物館所蔵浮世絵名品展」が開催される。
資料貸出はこれまでにもあったが、234点もの作品貸出は初という。北斎館の安村敏信館長が鑑定などで郷土博に協力、交流のあったことから実現した。
約60点ずつ4期に分けて展示。第1期(~6月22日)は「初期から歌麿まで」、第2期(6月28日~7月27日)は「栄之・北斎・英泉」、第3期(8月2日~31日)は「歌川派の全盛」、第4期(9月6日~) は「明治から昭和へ」。
郷土博が収蔵する浮世絵は約1200点。その中核となっているのは松方三郎旧蔵品で、初期の奥村政信、鈴木春信や歌麿、北斎、広重などの人気絵師、明治~昭和の小林清親や小原古邨の新版画まで幅広く、浮世絵の歴史を網羅している全国的にも珍しいコレクションとなっている。松方三郎は国立西洋美術館の基である「松方コレク
ション」を築いた松方幸次郎の弟で、郷土博が平成元年に一括購入し、関連作品を収集したもの。
来年50周年を迎える北斎館での展覧会について、郷土博学芸員の小林さんは「歴史ある北斎館での展示はありがたい。小布施は有名な観光地でもあるので、海外の方にも見てもらえる機会」と話す。
大河ドラマ「べらぼう」に数々の絵師が登場し、ますます注目が集まる浮世絵。今年の夏は、足立の宝を見に旅に出てみるのも面白そうだ。
写真上/美術品展示スペースが増設された1階ホール
中/千住の町の歴史の共通認識を問屋衆がまとめた珍しい「議定証文」
下/葛西ばやし佐野保存会のお囃子=オープニングセレモニーで

これまでと異なるのは「ストーリーのある展示」。単体で価値が見いだされる美術品でありながら、「足立」で生きていた人と人とのつながりにも注目し、描いた人の背景や暮らしにまで広げている。地元と作品が生まれた背景がわかるのが特徴で、他の美術館にはない試み。「美術の展示ではあるけど、美術の郷土史」と同館学芸員の荻原さん。
江戸後期の画家・谷文晁の「波濤龍雲図」は、正月の描き初めとして弟子の舩津文渕に贈ったもの。文渕は武蔵国足立郡渕江領上沼田村(現在の江北)の豪農で、師と同じ並びに「猛虎図」が展示されているのが味わい深い。

実は足立区立郷土博物館(以下、郷土博)の浮世絵コレクションは、同館での展示に留まらない。5月24日(土)~10月5日(日)、長野県・小布施の「北斎館」で、「知られざる秀逸コレクション 東京・足立区立郷土博物館所蔵浮世絵名品展」が開催される。
資料貸出はこれまでにもあったが、234点もの作品貸出は初という。北斎館の安村敏信館長が鑑定などで郷土博に協力、交流のあったことから実現した。
約60点ずつ4期に分けて展示。第1期(~6月22日)は「初期から歌麿まで」、第2期(6月28日~7月27日)は「栄之・北斎・英泉」、第3期(8月2日~31日)は「歌川派の全盛」、第4期(9月6日~) は「明治から昭和へ」。

ション」を築いた松方幸次郎の弟で、郷土博が平成元年に一括購入し、関連作品を収集したもの。
来年50周年を迎える北斎館での展覧会について、郷土博学芸員の小林さんは「歴史ある北斎館での展示はありがたい。小布施は有名な観光地でもあるので、海外の方にも見てもらえる機会」と話す。
大河ドラマ「べらぼう」に数々の絵師が登場し、ますます注目が集まる浮世絵。今年の夏は、足立の宝を見に旅に出てみるのも面白そうだ。
写真上/美術品展示スペースが増設された1階ホール
中/千住の町の歴史の共通認識を問屋衆がまとめた珍しい「議定証文」
下/葛西ばやし佐野保存会のお囃子=オープニングセレモニーで