足立朝日

　今年は千住宿開宿から４００年。それを記念して、ＮＰＯ法人あだち学習支援ボランティア「楽学の会」（金子勝治代表）による「あだち区民大学塾」（足立区・足立区教育委員会共催）で、講座「千住宿４００年の人と歴史」が開かれた。
　５月８日、15日、22日の３回にわたって学びピア21研修室で座学、29日には千住宿を実際に歩く現地学習を実施。定員50人に対し１００人以上の応募があり、区民の関心の高さがうかがえた。
　講師は「安藤昌益と千住宿の関係を調べる会」事務局長の矢内信悟さん（75）。同会は昌益の「自然真営道」原稿本が千住仲町の橋本家から発見された謎を解明しようと、２００４年５月、千住の人たちが中心となって発足。
　昌益は江戸時代の八町医者の思想家で、「自然真営道」は階級社会批判やエコロジー思想など、現代にも通じる先駆的な内容が記されている。
　近年の文化財発掘により、千住は文化人が集う地だったことがわかってきた。
　千住宿は１６２５年、日光道中の初宿として誕生。最初は千住１～５丁目だったが、掃部宿（仲町・河原町・橋戸町）、中村町・小塚原町が加わり、江戸四宿（他は品川・板橋・内藤新宿）の中で最大の宿場町として栄えた。現在は千住大橋を境に足立区と荒川区に分かれているが、「千住は南北で一つの宿」と矢内さん。
　千住は医学でも重要な役割を果たしていた。千寿常東小学校（千住旭町10-３）の敷地内には、「甲良屋敷跡」の説明板がある。甲良家は初代が日光東照宮の造替の大棟梁を務めた家で、幕府から下げ渡された千住辺りの官地に屋敷を設置。後に譲り受けた医師・本草学者の田村藍水が「雲和亭」と命名し、朝鮮ニンジンの国産化と江戸本草学興隆の拠点となった。「エレキテル」で知られるあの平賀源内も、藍水に弟子入りし雲和亭で学んでいる。
　この他にも幕府の要人など数々の有力な人材が千住に集っていた歴史的事実が、一般には知られていないという。
　歴史学の基礎を築いた内田銀蔵、第二次世界大戦前にファシズムに抵抗した経済学者・社会思想家の河合栄治郎など、千住生まれの著名人もいる。
　矢内さんは、千住の貴重な歴史が発信されていないと憂う。「１６００年
～１８００年代の千住には知のネットワークがあった。いろんな角度から興味ある人を調べてお互いに影響し合う『千寿学』という学問があってもいいのでは」と、参加者に呼びかけた。
　今や千住は大学が４つある文教都市になった。「せっかく大学生が街を歩いていても、千住の歴史を知らないままなのは残念」とも。千住宿４００年を機に、若者にも伝わる発信方法を考えていく必要がありそうだ。
　なお、今回の講座は10月に同じ内容で再開催予定とのこと。

写真上／講演する「安藤昌益と千住宿の関係を
調べる会」事務局長・矢内さん＝学びピア21研修室で
下／甲良家を中心とした文化人らの
相関図について話す同氏＝同