足立朝日

R65不動産 代表取締役 共同書店編境、ポータルサイト「千住浪漫シティ」など主宰 山本 遼さん(35)

掲載:2025年7月5日号
千住は高齢の人も考えが柔軟

 R65不動産は、その名の通り「65歳以上」に特化した国内唯一の不動産会社。
 山本さんが会社を立ち上げたのは2016年のこと。免許返納による生活圏の変更、子の近くに転居したい、持ち家の寿命など、様々な事情で賃貸を探す高齢者に、年間300件を紹介している。
 広島出身。愛媛大学卒業後、県内の不動産会社に就職。転勤した東京で、初めて高齢者の賃貸問題に直面した。80代の女性の物件探しで、200件電話して見つかったのは5軒。そこで会社に高齢者向け業務の提案をしたが、「儲からないと言われ、自分でやることにした」。
 孤独死防止の見守りサービス提供、家賃滞納の補償会社との連携など、大家の懸念への対策を講じ、「認知症以外の課題は、かなり解決できるようになってきた」。今は勉強しながら、模索している。「祖母も軽度の認知症。制限されてしまうのは淋しい。認知症になっても住み続けられたらいいなと思っています」
 他にも手がけているのが、空き家活用事業。区内に13棟あり、うち7棟がシェアハウス。2022年には千住仲町に「共同書店編境」をオープンした(7月に千住仲町44―11に移転)。30㎝の棚を借りた店主たちが、思い思いの本を置く個性豊かな書店は、新しい出会いに溢れている。棚主の年代はバラバラで「60~70代の友人が増えた」と喜ぶ。
 「本屋のある街に住みたいなぁと。新しい考え方を知るのに、本は向いていると思います。これだけ濃密な情報が一つの視点で書かれるのが面白い」。山本さん自身も、これまでの事業や活動について執筆中。晶文社から年内の出版を目指して準備を進めている。
 2019年に世田谷から千住に移り住んだ時、一番感じたのは「年齢が高い人でも柔軟な考えの人が多いこと。新しいことへの許容が広い。元々宿場町だったからかな」。世田谷や文京では騒音を気にする反応が返ってくるシェアハウスについても、千住では「面白いね、遊びに行っていい?と。若い人の活動に理解ある方が多い気がします」。
 今は早すぎる街の変化が、悩ましいという。「出来上がった街に入って来る人と、街を作ってきた人では、街に対する考え方の違いがあると思う」。街を消費するか育てるか。発展とのバランスは難しい。「家賃が上がると、気軽に飲めるお店も減るし」。住民としての本音だ。
 今後の抱負は?「友だちを増やしたい。他人だったらイライラすることも、友だちだったら許せることって多いですよね」。世代を超えて手をつなぐ。今の時代に最も必要なことに違いない。