足立朝日

雅楽師 東儀 季一郎さん(65歳)

掲載:2007年11月5日号
雅楽師
東儀 季一郎さん(65歳)
古千谷本町一丁目在住

 藤原家同様、数多くの家系や分家がある東儀家。雅楽師の東儀季一郎さんは、兼氏(かねうじ)から数えて十五代目の当主。独自の方法で雅楽を広めた東儀秀樹さんの家系は、400年前に別れ、久能山東照宮へ入った。
 日本の基礎を築いた聖徳太子は、仏教とともに古代アジア大陸から伝来した雅楽を重用し、楽家(がっけ)を創設。東儀家も、雅楽をもって代々官人として朝廷に仕えた。兼氏の血筋を引く季一郎さんの曾祖父・季熙(すえなが)さんは、明治時代の首都移転の際、楽家を引き連れて天皇家とともに東京へ移り住んだ。 明治政府時代の雅楽局では、洋楽も演奏することになり、季熙さんは日本で初めてクラリネットを吹いた。戦後、宮内庁式部職楽部に改称され、東儀家は和楽器は篳篥(ひちりき)、洋楽器はクラリネット、舞は左右のうち右舞を代々継承している。季節一郎さんの父・和太郎さんは、音楽の基本として季一郎さんにはピアノを習わせた。それが縁で、季一郎さんは16歳の時に洋楽に転向。日生劇場での作品づくりに携わったが、小野雅楽会の娘であった母・堯子(たかこ)さんの関係で、25歳にして雅楽に復帰。幸い東儀家伝来の書物も、いつでも教えを請える環境もあり猛勉強。

孫に託す楽師への道
 転機は45歳。本番で無心になれなかった季一郎さんは、初めてのミスをしたことを恥じて舞台を降りた。以来、後進指導者として活躍している。
 この10月5日には、息子・季祥(すえなが)さんの母校、また、孫の季和(すえかず)君(10歳)と季辰(すえたつ)君(6歳)も通う古千谷小学校で、文化庁依頼の雅楽演奏会を実施。父の作品で、両℡下ご成婚の際に宮中祝宴で演奏され
た「雲龍楽」(うんりゅうらく)はじめ、生の雅楽を全児童に体感させた。 
  現在、季祥さんは宮内庁の楽師。厳しく指導してくれた父に感謝する。季一郎さんは「孫たちにも、東儀家の後継者である意識が芽生えている」と目を細める。