江戸時代に商家と文人たちの交流から生まれた文化・芸術は、昭和50年頃まで千住の暮らしの中で続いてきた。今年7月、その系譜を担う人物の新たな資料が見つかった。俳諧人・岡本機柳。これまで知られてこなかったが、絵や句には思わず微笑んでしまう味わいがある。

岡本機柳は明治27年生まれ。没年は不明だが、最も新しい作品は昭和49年に描かれた色紙で、現代近くまで活躍していたことがわかっている。機柳の居た千住5丁目には安養院があり、還暦記念として建立された「ゆく春や鳥なき魚の目は泪」の芭蕉句碑がある。
今回、郷土博物館に寄贈されたのは、膨大な数の色紙や短冊など。学芸員の小林優さんは「そういう人物がいるということは聞いていたが、資料が出てきてはっきりした。機柳は千住の俳諧の系譜に欠かせない。新たに確認された千住の新ヒーロー」と喜ぶ。
千住の俳人・俳諧人は江戸時代から順に建部巣兆、宝井其角、其角堂栄機、其角堂機一と続き、機柳は機一の弟子。名倉家や高浜虚子とも交流があり、「やっちゃ場」(千住河原町の青物市場)の問屋主人で俳人の為成菖蒲園は機柳に師事していた。
千住宿では豊かな商家の主たちが文人を支援するだけでなく、ともに和歌、俳句、書などの文化・芸術をたしなんでいた。その人と文化の豊かさが、昭和まで続いていたことを物語っている。
同館の専門員・伊藤早穂子さんは「古い文献の調査ではなく、直接本人に会った人からの聞き取り調査は初めて。気取らない俳諧で、子どもの玩具の絵を描いていたり、身近なものを大事にする素朴な人柄だったのかなと」と惚れ込んでいる。
機柳の作品の一部を、郷土博物館の特別展示で初公開。人柄の滲み出た絵と句で、ぜひほっこりしてみて。
◆郷土博物館特別展示「千住宿400年」
【日時】10月21日(火)~1月11日(日)午前9時~午後5時(入館は4時30分まで)、休館日=月曜(11月3・24日は開館、翌火曜休館)・12月29日~1月3日
【入館料】一般200円、中学生以下と70歳以上(要証明書)・障がい者手帳保持者と介護者1名は無料※無料公開日=第2・3土曜、11月3日(月・祝)
【展示内容】暮らしや信仰などを様々な時代と観点から紹介。千住の地名の由来になったといわれる勝専寺(千住2―11)の「千手観音立像」(区登録有形文化財・非公開)の復元制作作品を初公開。四丁目氷川神社の山車、四神鉾(青龍・白虎・朱雀・玄武)なども。
【問合せ】TEL3620・9393郷土博物館
写真上/最も年代の新しい機柳の色紙
画題=奴凧「子も孫も皆健かに老の春 己酉新春」晋機柳(1969年)
中/画題=/首振り虎「踏みしめる土の
貴し國の春昭和壬寅新春御題に因みて」
晋機柳(1962年)
下/画題=茄子と谷中生姜「天の川地上の
戀ハ醜くかり」晋機柳(制作年不明)


今回、郷土博物館に寄贈されたのは、膨大な数の色紙や短冊など。学芸員の小林優さんは「そういう人物がいるということは聞いていたが、資料が出てきてはっきりした。機柳は千住の俳諧の系譜に欠かせない。新たに確認された千住の新ヒーロー」と喜ぶ。
千住の俳人・俳諧人は江戸時代から順に建部巣兆、宝井其角、其角堂栄機、其角堂機一と続き、機柳は機一の弟子。名倉家や高浜虚子とも交流があり、「やっちゃ場」(千住河原町の青物市場)の問屋主人で俳人の為成菖蒲園は機柳に師事していた。

同館の専門員・伊藤早穂子さんは「古い文献の調査ではなく、直接本人に会った人からの聞き取り調査は初めて。気取らない俳諧で、子どもの玩具の絵を描いていたり、身近なものを大事にする素朴な人柄だったのかなと」と惚れ込んでいる。
機柳の作品の一部を、郷土博物館の特別展示で初公開。人柄の滲み出た絵と句で、ぜひほっこりしてみて。

【日時】10月21日(火)~1月11日(日)午前9時~午後5時(入館は4時30分まで)、休館日=月曜(11月3・24日は開館、翌火曜休館)・12月29日~1月3日
【入館料】一般200円、中学生以下と70歳以上(要証明書)・障がい者手帳保持者と介護者1名は無料※無料公開日=第2・3土曜、11月3日(月・祝)
【展示内容】暮らしや信仰などを様々な時代と観点から紹介。千住の地名の由来になったといわれる勝専寺(千住2―11)の「千手観音立像」(区登録有形文化財・非公開)の復元制作作品を初公開。四丁目氷川神社の山車、四神鉾(青龍・白虎・朱雀・玄武)なども。
【問合せ】TEL3620・9393郷土博物館
写真上/最も年代の新しい機柳の色紙
画題=奴凧「子も孫も皆健かに老の春 己酉新春」晋機柳(1969年)
中/画題=/首振り虎「踏みしめる土の
貴し國の春昭和壬寅新春御題に因みて」
晋機柳(1962年)
下/画題=茄子と谷中生姜「天の川地上の
戀ハ醜くかり」晋機柳(制作年不明)