足立朝日

桜ガイドブック完成

掲載:2008年8月20日号


 明治の終わり頃、里桜の名所として全国に知られていた江北の荒川堤。人々を感動させた桜の姿が、『江北の五色桜―荒川堤の桜ガイドブック―』で蘇った。編纂刊行したのは「江北村の歴史を伝える会」(浅香孝子会長)。1年以上を費やし、会員たちの地道な努力が見事な1冊となって開花した。


贈呈式で=「郷土の歴史を伝えていきたい」。
自慢の我が子を手にした会員たち。
前列左から3人目が浅香会長、右隣は近藤区長


 五色桜の名は、色の異なる花が咲き乱れる様子が「五彩にたなびく雲のよう」と賞賛されたことに由来する。
当時78品種、3225本もの里桜が、約6㎞にわたって並木を作っていたという。明治19年に江北村(当時の沼田村)の村長・清水謙吾が、洪水対策として村人たちと一丸となって植栽、舩津清作が維持管理し育て上げたことが始まり。
 アメリカとの友好の証として、苗木がワシントン・ポトマック湖畔に贈られるなどしたが、河川の改修、公害、戦争などによって絶滅。一部の品種が都市農業公園などで見られるが、当時の姿を知る人も今ではわずかだ。
 語り部となる古老たちも80歳を超えることから、歴史の風化を惜しみ、2年前に会を発足。広く伝えていこうと、勉強会などを重ねてきた。
 ところが、五色桜の資料や解説書はほとんどなく、「伝え、守っていくためにも資料が必要」と一念発起。桜について全くの素人だった会員たちを、情熱が支えた。それぞれの得意分野や職業を活かして補い合いながら、細かい資料を集め、北海道や大阪造幣局など、五色桜を探して全国を飛び回った。
 舩津清作の孫で里桜研究の第一人者・舩津金松氏(91歳)の助力も大きく、今では全員が桜博士といえるほどに成長。まちづくりトラストの助成を得て刊行にこぎつけた。

珠玉の一冊
 B5判194ページにも及ぶ本は、桜への愛情が隅々にまで満ちている。厳選したカラー写真で、83種を紹介。短い開花期間の中で最も美しい花の姿をとらえた力作は、桜の花びらのみずみずしさや可憐さが伝わってくる。
  「五色桜物語」の項目からは、里桜が江戸時代に品種改良で多くの種類が生み出され、大名屋敷で大切にされていたことなどを知ることができる。
  圧巻なのは、大正時代の並木の再現。どこにどの種類が植えられていたかを図解してあり、「五彩にたなびく」桜絵巻を、思い描くことができる。
 発行部数1000部のうち、600冊を区内小中学校、図書館などに寄贈。8月5日に区役所で行われた贈呈式には、製作に携わった16人中15人が出席。浅香会長が近藤やよい区長に、完成したばかりの本を手渡した。
 浅香会長は完成までの経緯と会員たちの熱い想いと共に、「素人なりに頑張った。五色桜同様、自慢のスタッフ」と15人を紹介。「満開の桜の下で怒る人がいるだろうか。五色桜を区の自慢、宝として、新しいまちおこしができれば」と目を輝かせた。
  絶滅したと思われていた「江北匂」を調査中に都立小金井公園で発見し、接木に成功したことも報告。区内での植樹の希望を伝えた。
 今年に入って、区と区民の念願だった荒川堤の桜並木再生の要望を国が積極的に検討を開始。平成22年にまずは江北橋~扇大橋間で、最終的には都市農業公園前~西新井橋の左岸約5㎞で植栽される予定という。
  近藤やよい区長は「今この本ができたことは、天の采配ともいうべきタイミング。当時の桜並木を参考にしたい」と語った。


会員たちの情熱の結晶。
足立が誇る五色桜の全てがわかる


【江北の五色桜―荒川堤の桜ガイドブック―】

税込み2000円。小泉書店(江北7―14―13、Tel3898・6171)で発売中。区内の一部書店でも発売予定。
★この本を3人にプレゼント。応募方法はプレゼント参照。