足立朝日

足立区原爆被害者の会(足友会) 会長 山下 和宏 さん(82) 舎人在住

掲載:2026年8月5日号
子どもたちの感想が勇気に

 アリオ西新井で8月9日まで開かれている原爆展に、原寸大の原子爆弾が印刷された布がある。「長崎の爆弾は黄色なんですよ。高さ3・25m、横1・52m」とそらんじる。山下さんがデータを作成。面倒な作業に思えるが「パソコンが大好きなんですよ」とにこやか。イベントのポスターや資料も作り、LINEで会員に送信する。「会議に出席できない人もスマホで見ることができるので、随分楽になりました」
 1960年9月に発足した足友会の会員数は、山下さんが入会した2017年には約130人だったが、今は70人まで減った。平均年齢87歳と高齢化が進み、「動ける人間がやるしかない。出歩くのが好きなんです」。スマホのスケジュール表は、1月先までほぼ埋まっている。日本被団協のノーベル平和賞受賞以来、式典や講演会での出番が増加。「受賞はうれしいけど、実際には世界は核廃絶に動いていない。もう少し頑張れ、という激励だと考えている」。昨年は東京代表として長崎の平和式典に出席。今年5月6日の国民平和大行進では、砂町の第五福竜丸から新橋まで10㎞を「戦争反対、核兵器廃絶、世界平和」を訴え、旗を手に先頭を歩いた。
 1歳11カ月の時に長崎で被爆、1号被爆者手帳を持つ。「ぼくは恵まれていると思う。体は何ともなくて、仲間にびっくりされる」。大学進学で上京してからは、原爆のことは考えなかったという。営業マンとして働いていた石油関連会社で、他界した社長の後継を任され、72歳までの10年間、経営者として辣腕を発揮。退職後、たまたま行った区役所の原爆展で足友会に。「東京に原爆のことで悩んでいる人が、こんなにいるとわかった」
 2022年6月に6代目会長に就任。「やれることをやろうということで、原爆展、署名活動、年末の被爆者のお見舞いだとか先頭切ってやっています」。今年3月には、被爆2世の会員の提案で、初のコンサートを開催した。
 学校講演会の手配や1
00本近くある原爆関連ビデオの管理など、被爆者の声を届ける活動を続ける中、国の兵器製造や改憲などの報道に危機感が募る。「国が嫌な方向に歩き始めたのを感じる。中学生や高校生たちが兵隊に連れて行かれることにならないか心配。日本が戦争に引きずり込まれないか」
 世界が保有する核兵器は、地球が何回も滅びる数と言われている。平和を痛切に願うほど、無力感にとらわれることもある。それでも、亡くした友人たちを思い自らを鼓舞し「戦争はやめようよ、核兵器は廃絶しようよ、ということだけは叫び続けたい」。学校で必ず語ることがある。「自分で物事を考えて自分で結論が出せるように、自分の考えを持って進んで欲しいと」。子どもたちの感想に勇気づけられて、地道な一歩を重ねる。
 ひ孫も生まれ、多忙でも無理はしない。「自分のペースでやるようにしています」と軽やか。タフでほがらかな人柄が、未来を見つめ続ける。