足立朝日

この本

掲載:2026年10月5日号
★「背中合わせの恐怖」室井滋著/金の星社/1540円(税込)
 「この目で確かに見たのよ」――まさに室井のそんな言葉が聞こえてきそうな自身の体験談。
 例えば「ホテル『カナシバリ』」。金縛りにあった経験を持つ読者であれば、その恐怖が甦るかもしれない。
 関西での仕事の際に、関係者の女性4人が室井と同じ階に宿泊。睡魔に襲われて眠った室井だが、突然目が覚めて時計を見ようとした瞬間、ベッドサイドの灯りが急に暗くなり、それと同時に室井は金縛りに。しかも、近くの鏡に壁側の鏡が映り、室井は合わせ鏡の中で動けない状態になっていることに気付き、鏡のトンネルに吸い込まれる恐怖を感じて怖さマックス! あまりの恐怖に出なかった叫び声が復活し、金縛りは解けた。その時間、明け方の5時。
 朝食時に、他の4人にその話をすると、全員が同じ時間に金縛りにあっていたことが判明する。これだけでも十分怖いのだが、さらにその続きが――。
 金縛りのメカニズムは科学でも証明されているが、「その続き」の証明は難しいかもしれない。
 しかし、読み進めていくと、これは単なる怖い話の本ではなく、室井がなぜこの本を上梓したかの思いに行き着く。特に「おわりに」に記された室井の言葉には、現代を生きる私たちにとって大切なことが含まれている。
 だからこそ、すべての「不思議」に対して、室井は温かな目を向けられるのであろう。