足立朝日

「5日で5000枚の約束。プロジェクト実行委員会」事務局長 小川畳店店主 小川 崇 さん(48) 東和在住

掲載:2026年10月5日号
いぐさ産地を守り、畳で生活を守る

 畳の香りにはリラックス効果があるという。原料のいぐさに含まれるバニラと同じ成分は、湯に入れるとほのかに甘く香る。
 その特性を生かして、区内の銭湯で実施されている「八代いぐさ湯」は、廃棄する畳の端材を使ったもの。小川さんの提案をきっかけに「香り湯プロジェクト」の一環として5年前から始まり、今では全国の銭湯にも広がっている。区内23軒の銭湯に必要な端材150㎏は、小川さんが残留農薬のない国産の良質なものを地道に集め、鮮度が落ちないように保管し調達している。
 4月に「5日で5000枚の約束。プロジェクト実行委員会」代表の2代目事務局長を継いだ。災害時に全国の畳店から避難所に新しい畳を無料で届ける活動で、2013年に神戸の畳店店主により発足。参加畳店があらかじめ決めてある提供枚数を、発災後3日以内に作って、5日以内に届ける。提供する畳は6~7㎏と軽く、子どもや女性でも持ち運べる。
届けるだけでなく、被災地に地域の畳店が入って、必要な枚数や避難所解散後の再利用などについてアドバイス、アフターフォローもする。
 「現地の畳屋は地元で仕事をしているので、自治会、消防団、民正委員をしていて、行政やいろんな方と付き合いがあり、動きやすい」。現場の実情にしっかりと寄り添った、支援ができる形だ。
 2015年には、小川さんの呼びかけで足立区が都内初の「災害時における畳の提供に関する協定」を同委員会と締結。2016年の熊本地震の際は、広報担当として現地メンバーからの情報を集計し手配、裏方として支えた。今年6月には締結自治体が、全国201にまで増えた。
 「避難されている方の心身の具合が、畳によって生活環境が少しでもよくなるように第一に考えて行動したいと思っている。平時も活動を通じて、より地域の方とつながることで、自助、共助を見直すきっかけになれば」
 いぐさは中国産に押されて、国内の産地は八代市のみ。14年程前からいぐさ農家に足を運び、苗づくりと収穫を手伝う。「じっくり農家さんと話ができる時間があるので、思いやこだわりを聞ける。ぼくらが語り部になって消費者の皆さんに伝えて、需要につながる循環が作れる」とほほ笑む。長年培ってきたノウハウを、新たな20人の仲間たちに伝え、10月に作業に行く予定という。
 信頼ある交流の中に、「今あるいぐさ農家は200軒。半分になる可能性がある。国レベルの支援が必要」との危機感がある。昨今、畳は外国人に人気で上質なものを購入する人も増えているが、「日本人にとって、日常のものであってほしい」と小川さん。「八代は最後の残された産地。去年は水害、立ち直ろうとすると、また地震。ひと踏ん張りしないと。今後も農家さんと手を取り合ってやっていきたい」。爽やかな眼差しで前を向き、挑戦していく姿があたたかい。