
消防出初め式などでお馴染みの、正月の風物詩「はしご乗り」。東京都指定無形民俗文化財に指定され、江戸時代から庶民に親しまれてきた火消しによる伝統の技が、(社)江戸消防記念会・第11区によって、足立区でも受け継がれている。1月5日(月)・6日(火)には、区内各所で披露される。息を飲む技の数々と味のある木遣り声を、ぜひ間近で感じてみよう。

支え手と乗り子の息がピッタリ=今年正月、区役所で
■火消しの歴史
町の消防を担う「火消し」が江戸の町に誕生したのは享保4(1719)年。南町奉行所の大岡越前守忠相の「江戸の町は江戸の庶民の手で守らせる」という自衛・自治の施策で、とび職人によって組織された。
千住は安政年間(18
54~59)に南北千住消防組が作られ、歴史が古い。
はしご乗りは、彼らが高所で危険な作業をするのに必要な機敏さ、慎重さ、勇敢さを高めるための訓練として始まったと言われているという。
■伝統の技
江戸消防記念会は23区を11地区に分け、纏(まとい)、半纏、火消し用具などの保存や、木遣り、はしご乗りなど技術の伝承を行っている。足立区のみで構成される11区は、会員数51人。
はしごは各区に1台、毎年新しい青竹で作られるもので、高さは6・5m、甲(横木)は15本。それを12本の鳶口(先端に鉤がついた長い棒)だけで支え、その上で演技を披露する。揺れ動くはしごで技を成功させるのは、支え手と乗り子の息と技術がピッタリと合って、初めて可能となる。
足立の会員たちは、短いはしご2台と昨年本番で使ったはしごを使い、練習を重ねてきた。機械の発達で昔ほど腕力を使わない現代では、技をこなすのは簡単ではない。 江戸消防記念会副会長で、11区総代の岡田昭吾さんは「私らは人に負けたくないから頑張った。古き良き時代の伝統を繋いでいくのは大変」と話す。今は人数が減り、全盛期の半分ほど。若い人がなかなか入ってこないのが、悩みの種だ。
乗り子は、4年目の松田哲周(てつひろ)さん(27)、3年目の加藤千春さん(25)、1年目の堀川泰平さん(30)の3人が務める。ハラハラする高さでも、とび職の彼らは慣れたもの。
本番に向けて、「背中から落ちる技は痛いが、気合と根性で」(堀川さん)、「精神的に難しい。先代に恥じないように」(松田さん)、「緊張しすぎてもダメだし、やるしかない」(堀川さん)と語った。
練習最終日の12月9日夜7時。雨で練習はできなかったが、金子秋雄さん宅に集合した一同は、出来上がってきたばかりのはしごの縄を丁寧に締め直し、稽古の打ち上げを行った。深く朗々と響く木遣りの掛け声「やり声」で、全員が本番での結束と安全を誓った。
【はしご乗り・予定時間】
▼5日=9時半頃に慈眼寺(千住消防署隣)からスタート、午前中は千住の街を回る。千住消防署=10時半、千住警察署=10時45分、旭町ビックリヤ=11時、マルイ=11時15分、北千住ヨーカドー=11時半、勝専寺=11時50分、足立消防署=14時、西新井消防署=15時5分
▼6日=午前中は東京ビッグサイト(有明)で出初式。足立区役所=12時半、源証寺(足立区入谷2-15-25)=14時半、西新井大師=15時