足立朝日

職員にゲートキーパー講習

掲載:2009年1月20日号
こころといのちの相談支援 東京ネットワーク事業

 自殺で命を落としている人は、毎年全国で3万人もの数に上る。
 足立区の自殺者数は、平成19年度は152人。平成18年度は161人と23区で最も多く、自殺死亡率は25・8%で3番目に高い。東京都、全国と比べて60歳以上が多く20歳代以下が少ないという特徴がある。


 18年に試行された自殺対策基本法に基づき、足立区では今年度から2カ年にわたって都の委託事業として「こころといのちの相談支援東京ネットワーク事業」を行う。自殺の防止や自死遺族等への支援など、総合的に自殺対策を進めるもので、単独の区としては都内初。
 その第一弾として区民と接する機会の多い窓口の職員を対象に、ゲートキーパー研修が11月と12月に行われ、約120人が受講した。
 「ゲートキーパー」とは、周囲の人の顔色や態度から自殺のサインに気付いて、見守りをしたり専門相談機関へとつなぐ人材のこと。
 NPO法人自殺対策支援センター・ライフリンク代表の清水康之氏=写真=が、自殺総合対策の必要性について講演した。
 全国で自殺が急増したのは、97年度決算期の98年3月。山一證券破綻の年だったことから、100年に1度の経済危機と言われる今、その時以上の危機的状況にあると清水氏は指摘。
 「自殺者の多くが、実は生きようとしていたことに、地域・社会が関わる余地がある。専門分野に入る前に、生活者として向き合うことが必要」と説いた。
 また「自死遺族の会」の南部節子氏が、自殺で夫を亡くした経緯と遺族の苦悩を切々と語り、「夫は普通を装っていて、悩んでいるのがわからなかった。人は人でしか癒せない。悩みを聞いてあげることで助かるのでは」と訴えた。
 都立多摩総合精神保健福祉センターの熊谷直樹氏による、具体的な自殺の兆候や対応などの講習もあり、職員たちは真剣に耳を傾けていた。