足立朝日

豊かな心と想像力を育む ダンボールとわりばし工作

掲載:2009年8月5日号


 工作の達人、造形作家・滝口明治さん(東伊興在住・76歳)の「親子でつくろう わりばし工作」、「ダンボール工作でよみがえる昭和の風物」が出版されている。滝口さんは12年間、漫画家・横山隆一氏に師事し、その後イラストレーターとして独立。図画工作の作品制作や出版に関わり、小学生新聞の夏休み工作のアドバイザーなどにも携わる。今年1月の「あだち 子ども ものづくりフェスタ」でも滝口さんのダンボールで作った電動恐竜(約2メートル)が展示され、子どもたちに大人気だった。著書多数。

●「ダンボール工作でよみがえる 昭和の風物」(実業之日本社・1575円税込)
 都電、YS―11、蒸気機関車(D51型)など、懐かしの思い出、全9モデルの原寸型紙付き。必要な材料、道具、テクニックなどイラスト入りで解り易く説明されている。
中級モデルの「東京タワー」の工作のポイントは、パズルのような幾何学模様の鉄骨部分。厚紙を丹念に切りぬいていく根気と、主柱を先端部分へとバランスよく組み上げていく慎重さが大切。高さ約60㎝。
 滝口さんは「ダンボール工作」を始めて35年。工作の記事制作の依頼を受けるようになり、当初は木工で作品作りをしていたが、木工はかなづちを使ったりするので、ちょっとした騒音が出る。そこで、騒音を出さずに工作ができ、手に入れやすい材料はないかと探していてダンボールに出会った。
ダンボール工作は切ったり、貼ったりの作業ばかりなので騒音の心配がない。素材の使い方を工夫すれば、かなりの強度がだせるなど多くの利点がある。「表紙と中芯とを貼り合わせてあるという性質をつかむと、本当に加工の自由が効く優れた素材だということがわかってくるでしょう。基本的な技巧を少し練習してから、それぞれのモデルの制作に取り組めば、どなたでもダンボール工作の醍醐味を味わっていただけます」という。
 企業などから依頼されたイベント向けには、数メートルにもなる機関車やスペースシャトルなども作ったが、これまで本で紹介してきたのは全て子どもが対象だった。しかし本書の作品は大作と同レベルの技術を使わないと作れないものばかり。
 「ここに紹介した『作り方』は参考例です。ちょっと難しいと感じた方はいくらでも簡単にしてしまっていいのです。またこれでは物足らない方は、さらに細かい部分まで作り込んでいってください。自由な創意工夫で楽しんでください」と滝口さんのメッセージ。

写真上=中級モデルの東京タワー
写真下=原寸型紙付きの本


●「親子でつくろう わりばし工作」(実業之日本社・980円税込)
 恐竜、動物、飛行機、車、おもちゃなど、何だってわりばしで作れる。「原寸型紙つき」だから、きれいにでき、夏休みの工作の宿題もばっちり。
 缶や箱などの外側にわりばしを貼っていくだけで素敵な花びんや小物入れが作れたり、使える小物や動くおもちゃもある。写真やイラストでていねいな説明もあるので、いろいろなわりばし工作にチャレンジしよう。
 滝口さんは「子どもたちが手づくりをしなくなって
いる。刃物を使うと危ないからと、大人たちがセーブしているのかもしれない。しかし、身近な素材を使ってものを作ることは、子どもたちの想像力をかりたて、豊かな心を育てる大切な遊びなのです」という。
 「わりばし工作」はクギやネジを使わず、木工用ボンドで組み立てる。木なのに簡単に曲面を作れるのが特徴。「カッターナイフなどを使うため、大人が一緒に作業してください。道具も慣れてくると少ない力で上手に使いこなせるようになります。軽いし柔らかいので扱いやすいです。お子さんと一緒に手作りの楽しさを味わってください」と滝口さん。






写真上右=型紙付きの親子でつくろうわりばし耕作の本
写真下=上から①可愛い額縁絵②立体恐竜③小物入れ