足立朝日

この本

掲載:2010年3月5日号
『鷹羽狩行の俳句』
太田かほり著/角川書店刊/2000円(税別)

 1月号当欄で紹介した『俳句回廊』の著者・太田かほり氏による新たな著書。大学で「日本語表現法」「日本語文章作法」を教える著者は、日本の風土が育んできた日本の言葉、言葉の文化を若い世代に伝承する任を担いたいと考える。そのひとつとして、自らの選句を信じ、名句の観賞を試みる。
本書で採り上げる鷹羽狩行(たかはしゅぎょう)の俳句は、著者が俳句とかかわることになった原点とも言える。時代とともに季語も変化する中で、狩行俳句は現代における季語の本意を最もよく捉(とら)えている点で、時代を代表する作家であると著者は考える。俳句の本筋である古典を継承しつつ、前人未到の海外俳句の分野を切り開いた鷹羽への畏敬の念と、「日本の美しい四季の心と言葉」を次世代に伝えたいと切に願う著者の透き通った感性が、ページを追うごとに香り立つ。