芭蕉が千住から旅立った奥の細道。その道中をハマグリの貝殻(がら)の中に再現した「貝合せ」シリーズが完成した。
呉服店「(株)夢工芸・染の新井」(西新井6-46-8)の新井重男社長(61)が企画し、専属の友禅作家・小守脩(おさむ)さん(69・新宿区在住)が制作。千住宿から出立した二人旅は、3年の月日をかけて22カ所を巡り、ついに終着の大垣まで辿り着いた。
「芭蕉おくの細道シリーズ貝合せ」は、横の長さが10㎝ほどのハマグリの内側に、句を詠んだ地の風景や旅をする芭蕉と曽良の姿が、2枚1対で描かれている。
「貝の中を旅する芭蕉と曽良」の見出しで、足立朝日が貝合せを記事に取り上げたのは、平成20年5月20日号。当時、出来上がっていたのは松島までの5対だったが、大垣からわざわざ見に来た人もいたという。2年後完成の目標通り、23対が揃った。
5月15日(土)・16日(日)にはホテルパインヒル西新井で、親交のある人たちを集めて初お披露目の記念イベントを開催。芭蕉文学に造詣の深い松本孝氏(草加市在住)の講話、詩人・硲(はざま)杏子氏の朗読、ギタリスト・前田司氏と久保登志雄氏の演奏が、来場者を楽しませた。
虫眼鏡で見る豊かな風景
雲厳寺(黒羽)の屋根瓦、そこから下りる石段の1段1段、その横で風に梢を揺らす細やかな緑の葉。虫眼鏡を使わなければ細部まで見えないほどの緻密(ちみつ)さでありながら、風や水の動きなど、自然の息吹きがまざまざと感じられる見事な出来ばえだ。人物もその表情まで丁寧に描かれている。
貝の裏側に和紙を貼って、墨や顔料で絵付けをする昔ながらの手法で制作。地道で根気のいる作業がひたすら続く。拡大レンズを覗きながらの作業は目と神経への負担が大きく、休みながらでないとできないという。
小守さんは「無心になって描いた。一番いい所だけ描いちゃったので、千住から大垣まで行って一段落だが、これからも資料を見て間の場所を描いていきたい」と意欲を燃やす。
足立区への感謝を込めて
新井社長がこのシリーズを思い立った原点には、「足立区への感謝の気持ち」がある。昭和45年に竹の塚で呉服店を開業。5年前に現在の西新井6丁目に移り、「足立区に骨を埋めようと覚悟した」という。その想いを込めて4年前、千住大橋など昔の足立区の風景をシリーズで描いた着物を、小守さんに依頼し発表した。
翌年、誰もやったことがないことに挑戦したいと、小守さんと話し合って貝合せを企画。完成した「千住宿」の1対を見た新井社長は、「その後が気になってしまって」とシリーズ化を決めた。
披露イベントで「初めて23個並べて、圧巻だと思った。貝合せでおくの細道を描いたものは、他にはないと思う」と新井社長も感慨ひとしお。「こんなに反響があるとは思わなかった。今後は店舗での展示を気楽に見てもらって、足立の文化的な場所になってくれたら」と目を細める。
ギャラリー
染の新井では1階を店舗兼ギャラリーとして、「おくの細道シリーズ貝合せ」を常設展示。スペースの都合で半分の12~13対のみだが、頼めば他のものも見せてくれる。
「大師西駅から大師まで行く人は、距離があるので、お店の椅子で一休みして」と新井社長。買い物の予定がない人も、気軽に立ち寄れる。
午前10時~午後7時、水曜定休。問合せTEL3854・2777。日暮里・舎人ライナー「西新井大師西駅」徒歩5分、はるかぜ(区役所~西新井駅東口~都市農業公園)「水野病院前」すぐ。
【メモ=貝合せ】
平安時代に貴族の遊びとして広まり、江戸時代には裏返した1対の貝を当てて遊んだ。貝の内側に金箔などを使って装飾。題材は「源氏物語」が多い。

写真=上/千住大橋を描いた着物と貝合せを前に、新井社長(右)と友禅作家の小守さん=ホテルパインヒル西新井で
中/旅の終点「大垣」の貝合せ
下/3年前に完成した千住宿の貝合せ(上)。下は「白河の関」
呉服店「(株)夢工芸・染の新井」(西新井6-46-8)の新井重男社長(61)が企画し、専属の友禅作家・小守脩(おさむ)さん(69・新宿区在住)が制作。千住宿から出立した二人旅は、3年の月日をかけて22カ所を巡り、ついに終着の大垣まで辿り着いた。

「芭蕉おくの細道シリーズ貝合せ」は、横の長さが10㎝ほどのハマグリの内側に、句を詠んだ地の風景や旅をする芭蕉と曽良の姿が、2枚1対で描かれている。
「貝の中を旅する芭蕉と曽良」の見出しで、足立朝日が貝合せを記事に取り上げたのは、平成20年5月20日号。当時、出来上がっていたのは松島までの5対だったが、大垣からわざわざ見に来た人もいたという。2年後完成の目標通り、23対が揃った。
5月15日(土)・16日(日)にはホテルパインヒル西新井で、親交のある人たちを集めて初お披露目の記念イベントを開催。芭蕉文学に造詣の深い松本孝氏(草加市在住)の講話、詩人・硲(はざま)杏子氏の朗読、ギタリスト・前田司氏と久保登志雄氏の演奏が、来場者を楽しませた。
虫眼鏡で見る豊かな風景

貝の裏側に和紙を貼って、墨や顔料で絵付けをする昔ながらの手法で制作。地道で根気のいる作業がひたすら続く。拡大レンズを覗きながらの作業は目と神経への負担が大きく、休みながらでないとできないという。
小守さんは「無心になって描いた。一番いい所だけ描いちゃったので、千住から大垣まで行って一段落だが、これからも資料を見て間の場所を描いていきたい」と意欲を燃やす。
足立区への感謝を込めて

翌年、誰もやったことがないことに挑戦したいと、小守さんと話し合って貝合せを企画。完成した「千住宿」の1対を見た新井社長は、「その後が気になってしまって」とシリーズ化を決めた。
披露イベントで「初めて23個並べて、圧巻だと思った。貝合せでおくの細道を描いたものは、他にはないと思う」と新井社長も感慨ひとしお。「こんなに反響があるとは思わなかった。今後は店舗での展示を気楽に見てもらって、足立の文化的な場所になってくれたら」と目を細める。
ギャラリー
染の新井では1階を店舗兼ギャラリーとして、「おくの細道シリーズ貝合せ」を常設展示。スペースの都合で半分の12~13対のみだが、頼めば他のものも見せてくれる。
「大師西駅から大師まで行く人は、距離があるので、お店の椅子で一休みして」と新井社長。買い物の予定がない人も、気軽に立ち寄れる。
午前10時~午後7時、水曜定休。問合せTEL3854・2777。日暮里・舎人ライナー「西新井大師西駅」徒歩5分、はるかぜ(区役所~西新井駅東口~都市農業公園)「水野病院前」すぐ。
【メモ=貝合せ】
平安時代に貴族の遊びとして広まり、江戸時代には裏返した1対の貝を当てて遊んだ。貝の内側に金箔などを使って装飾。題材は「源氏物語」が多い。

写真=上/千住大橋を描いた着物と貝合せを前に、新井社長(右)と友禅作家の小守さん=ホテルパインヒル西新井で
中/旅の終点「大垣」の貝合せ
下/3年前に完成した千住宿の貝合せ(上)。下は「白河の関」