足立朝日

歴史ジャーナリスト・東京歴史ミステリー研究会主宰 跡部 蛮さん (51歳)

掲載:2012年2月5日号
西伊興在住
歴史は想像力を働かせるから楽しい


 本能寺の変で信長は、光秀に家康を討たせようとしていた――。
 そんな新説を、昨年7月出版の『信長は光秀に「本能寺で家康を討て!」と』命じていた』(双葉新書/800円税別)で展開。そこには人を信じやすく騙されやすい、斬新な信長像が登場する。
 「カリスマと言われているが、人間的だったり、革命的なことをやったりしている。冷酷な人間と世間に誤解されているので、かばいたくなる」。一番好きな歴史上の人物に対する深い洞察は、膨大な資料から導き出された推論とともにユニークだ。反論も来るが、「本当のことは誰にもわからない。自分が正しいと思っているわけではないけれど、信じている」。
 自らを歴史研究家ではなく〝歴史ジャーナリスト〟と名乗る。別名で社会・経済関係のノンフィクションライターとして活動。歴史の検証に、状況証拠を固めて仮説を打ち立てる、ジャーナリストの手法を取り入れているこだわりがある。
 高校時代からの歴史好きが高じて、現在は大学の日本史学専攻の博士課程に在籍。「歴史は資料に基づいて自由に想像力を働かせて、当時に思いを馳せる。だから執筆意欲を刺激される」。楽しくてたまらない、と表情が雄弁に語る。「仮説を証明する資料が欲しいと思っていると、不思議と見つかる。奇跡的なことがたくさんある」。歴史と両思いなのだろう。
 歴史好きには、古典などの一次資料を読むことを勧めている。難しそうだが、専門知識はいらないとか。「自分も最初はわからなかった。英語と同じで毎日少しずつ眠くなるまで読む。ずーっと続けていると、ハッとわかる瞬間がある」。そこから自分なりの考察を見つけると、より面白くなる。「誤読を恐れないで。指摘されたら謝ればいいんです。でないと、新しい説は生まれてこない」
 3月にはあだち区民大学塾で平清盛を講演する(★詳細6面)。「歴史を調べる楽しさを知ってほしい。資料を読み比べて、清盛の実像をみんなで探していきましょう」
 真実は誰にもわからないからこそ歴史は面白い。情報が溢れる今の時代、過去を探求するのは、最高に贅沢なロマンチストの仕事かもしれない。