足立朝日

藤沢周平『蟬しぐれ』 岸惠子の朗読で甦る

掲載:2013年8月5日号
 滔々と流れる信濃川沿いに位置し、ひときわ輝くガラス張りのモダンな新潟市民芸術文化会館。通称「りゅーとぴあ」と呼ばれる同館は、1998年の開館以来、市民を巻き込んだ文化発信基地として、常に最大能力を発揮。国内屈指のコンサートホール、劇場、能楽堂を持ち、積極的に自主公演に取り組む姿が、演劇人に支持されている。
 自主公演のひとつ、「りゅーとぴあ発 物語の女たちシリーズ」では、水谷八重子、十朱幸代、奈良岡朋子に続き、岸惠子が登場。作品は、この8月・9月・10月に新潟のみならず、東京ほか全国で上演される『蟬しぐれ~永遠の初恋、ふく~』(藤沢周平作・文春文庫より)。藤沢作品の中でも特にキラリと光る同作品は、北国の海坂藩の城下町を舞台に繰り広げられる文四郎とふくの秘められた恋の物語。
 上演台本は、りゅーとぴあ演劇部門芸術監督の笹部博司。『奇跡の人』『白石加代子百物語』『身毒丸』『ミザリー』『グリークス』などを手掛けた敏腕プロデューサーである。
演出は、NHK大河ドラマ『義経』『新・御宿かわせみ』などを制作した黛りんたろう。音楽は、舞台・テレビ・映画など多ジャンルで活躍中の岩代太郎。
 40年にわたるパリ暮らしの後、日本とパリを往復しつつ、女優・作家・ジャーナリストとして活躍中の岸。その文才は、日本文芸大賞エッセイ賞受賞『巴里の空はあかね雲』、日本エッセイスト・クラブ賞受賞『ベラルーシの林檎』などで実証済みだ。さらに、初の書きおろし小説『わりなき恋』(幻冬舎刊)を上梓した岸が、その感性をもって、文四郎とふくとの深い愛情をどのように表現するかが期待される。
 岸は、「海坂藩というのは、きっと藤沢周平さんの心の中の日本ではないかと思うのです。だから私も何か懐かしく、郷愁を感じるのです」と語る。藤沢が思い描いた古き良き日本に生きた男女が、岸の朗読で生を受け、観客の心の中で動き始める。
【かめありリリオホール】日時=8月30日(金)15時、料金=6000円。チケットTEL5680・3333【三越劇場】日時=9月2日(月)15時、9月3日(火)~9月6日(金)13時、料金=6500円、チケットTEL0120・03・9354
【亀戸文化センターカメリアホール】日時=10月3日(木)15時、料金=6000円、チケットTEL5626・2121
【問合せ】各会場ともにJ-clipTEL3352・1616

写真提供:資生堂