足立朝日

この本

掲載:2021年4月5日号
★「論語・人生・経営 渋沢百訓」渋沢栄一著/角川ソフィア文庫/817円(税込)
 2024年、紙幣デザインが一新されるにあたり、1万円札の新たな顔となる渋沢栄一。この「日本の資本主義の父」は、大河ドラマの影響もあり、今やまさに「時の人」である。
 1840年、現在の埼玉県深谷市に生まれた渋沢は、厳格な父親のもとで家業を手伝ううちに、商売上の道徳観や倫理観などを習得。次々と才覚を現し、一橋家の家臣・幕臣となる。67年に徳川昭武に随行して、ヨーロッパ諸国を歴訪。維新後、69年に明治新政府に仕官。73年に健全財政を主張して辞任後は、第一国立銀行をはじめ指導的立場で500社前後の企業の創立・発展に貢献した。商工業の発展にも尽力した渋沢は、経済団体を組織し、商業学校を創設するなど実業界の社会的向上に努めた。
 同書は、論語の精神に基づくビジネスマンの生き方をまとめた渋沢の談話集「青淵百話」から、「商業の真意義」「企業家の心得」「富貴栄達と道徳」「就職難善後策」「初めて世に立つ青年の心得」「人格の修養」など、項目を見るだけで背筋が伸びるような57話を精選して収めている。
 渋沢の自身の経営哲学を後進に伝えたいという思いが溢れ、商売上の秘訣が惜しげもなく伝授された貴重な1冊。利益を得ることと、社会貢献の均衡を図る品格あるビジネスマンの必読書でもある。